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悠真は小さく息を吐き、取り出し口からサカバンバスピスのぬいぐるみを取り出し、棗に向かって差し出した。
「……取れた。これで、いいか?」
その言葉には、少しだけ誇らしさが滲んでいた。
「……っ!すっげええええ!!ほんとに!ほんとに取っちゃったよ!!」
棗はぬいぐるみを受け取り、興奮しながら悠真の背中をバシバシ叩く。
「痛い、痛いぞ水鏡」
「あっ、ごめん……!つい、興奮しちゃって」
そして、ぬいぐるみをぎゅっと抱き締めて、表情を緩めた。
「へへっ……これ、私の一生の宝物にする……」
それは今までかっこよかった棗の見せた、初めての可愛い姿だった。
「……一生の宝物、か」
悠真は小さく呟き、棗の横顔を見つめた。棗のその表情──今まで見たことのない、可愛らしい表情。悠真の胸の中で、何かが激しく揺れ動く。
(……棗、お前の一生は……もう、長くないんだ)
それと同時に、任務の期限がもう三週間を切っていることに気づく。つまり、棗の一生も……後三週間で終わりだということだ。
「……お前、そんな顔もできるんだな」
それを誤魔化したくて、悠真はそう口にする。
「……!てか、ああ、あう。その、今の顔は、その……!えっと、忘れろ!」
棗は顔を赤くして、目を泳がせる。こんな姿を他人に見せるのは初めてだった。
「……照れてるのか?」
「そ、そういうこと口にしない!」
「ふ、まあいい。気に入ってくれたなら、良かった」
悠真は小さく微笑む。それは、彼の見せた初めての笑みだったかもしれない。
「……ああ、すっごく気に入った」
そう言って、悠真の顔を見つめる。
棗が気に入ったのはぬいぐるみか、それとも……?




