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最後の標的  作者: 有氏ゆず
第五話 宝物
33/39

5-2




9月11日(土)


ボウリング場に集合したクラスメイト達。

代表として棗が受付をして、全員のところに戻ってくる。


「よし、いまから2時間投げ放題だ!」

「……2時間、か。楽しみだ」


悠真のその言葉には、素直な期待が込められていた。悠真は棗と一緒に過ごせる時間を、心から楽しみにしていた。




店の中に入り、一同はレーンへと向かった。

クラスメイトの鈴木が悠真にボウリングのやり方を教えてくれる。悠真は真剣に鈴木の説明を聞きながら、ボールを手に取った。

悠真は少し不安そうに棗の方を振り返る。


「転校生クン!がんばれー!!」


悠真の不安を察してか、棗は大声で声援を送る。


「……ああ」


悠真はその声を聞いて、少しだけ顔を赤らめる。

そしてボールを構え、レーンの先にあるピンを見つめた。組織では、標的を狙う訓練を何度も受けてきたが、これは標的を狙うのではない。ただ、楽しむためにピンを倒すだけだ。その違いが、悠真の心を少しだけ軽くしていた。


悠真は鈴木に教えられた通り、ボールを振りかぶり、レーンに向かって投げた。ボールは真っ直ぐレーンを転がり、ピンに直撃した。




「ストライクだ!」

「朝倉すげえー!!」


ピンが一斉に倒れる音が響き、周囲のクラスメイトたちから歓声が上がった。

悠真は目を見開き、自分の手を見つめる。組織で培った正確さが、こんな場面で役に立つとは思わなかった。


「……ストライク」


悠真は小さく呟き、棗の方を振り返った。


(……水鏡の、反応が見たい)





「は、はははは!!朝倉クン、キミ初めてって本当なのか!?すごすぎるじゃないか!!」


棗は大笑いしながら、悠真のところにやってきて肩を組む。


「……っ、近いぞ」


悠真は棗に肩を組まれ、顔を赤らめる。棗に褒められた……その事実が、悠真の心を満たす。


「なんか私もストライク出したくなってきたぞ!」

「……出したい、で出せるものなのか?」


悠真の問いに、棗は吹き出す。


「ふ、ふふっ!ここで出すのが棗様なんだよ!皆、応援してくれ!」


周囲のクラスメイトたちも、棗を応援し始める。


「水鏡、頑張れー!」

「かっこいいとこ、見せてー!」


クラスメイトの声に頷き、棗はボールを投げる。

すると……






……なんと力が入りすぎてガター。


「ぷっ……あはははははは!!!!」


これには棗もクラスメイトも大笑いだった。


「水鏡、フラグの回収上手すぎだろー!!」

「だろ!?さっすが私!!」




(……水鏡は失敗しても、こんな風に笑えるのか)


悠真の口元が少しだけ緩んだ。




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