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9月11日(土)
ボウリング場に集合したクラスメイト達。
代表として棗が受付をして、全員のところに戻ってくる。
「よし、いまから2時間投げ放題だ!」
「……2時間、か。楽しみだ」
悠真のその言葉には、素直な期待が込められていた。悠真は棗と一緒に過ごせる時間を、心から楽しみにしていた。
店の中に入り、一同はレーンへと向かった。
クラスメイトの鈴木が悠真にボウリングのやり方を教えてくれる。悠真は真剣に鈴木の説明を聞きながら、ボールを手に取った。
悠真は少し不安そうに棗の方を振り返る。
「転校生クン!がんばれー!!」
悠真の不安を察してか、棗は大声で声援を送る。
「……ああ」
悠真はその声を聞いて、少しだけ顔を赤らめる。
そしてボールを構え、レーンの先にあるピンを見つめた。組織では、標的を狙う訓練を何度も受けてきたが、これは標的を狙うのではない。ただ、楽しむためにピンを倒すだけだ。その違いが、悠真の心を少しだけ軽くしていた。
悠真は鈴木に教えられた通り、ボールを振りかぶり、レーンに向かって投げた。ボールは真っ直ぐレーンを転がり、ピンに直撃した。
「ストライクだ!」
「朝倉すげえー!!」
ピンが一斉に倒れる音が響き、周囲のクラスメイトたちから歓声が上がった。
悠真は目を見開き、自分の手を見つめる。組織で培った正確さが、こんな場面で役に立つとは思わなかった。
「……ストライク」
悠真は小さく呟き、棗の方を振り返った。
(……水鏡の、反応が見たい)
「は、はははは!!朝倉クン、キミ初めてって本当なのか!?すごすぎるじゃないか!!」
棗は大笑いしながら、悠真のところにやってきて肩を組む。
「……っ、近いぞ」
悠真は棗に肩を組まれ、顔を赤らめる。棗に褒められた……その事実が、悠真の心を満たす。
「なんか私もストライク出したくなってきたぞ!」
「……出したい、で出せるものなのか?」
悠真の問いに、棗は吹き出す。
「ふ、ふふっ!ここで出すのが棗様なんだよ!皆、応援してくれ!」
周囲のクラスメイトたちも、棗を応援し始める。
「水鏡、頑張れー!」
「かっこいいとこ、見せてー!」
クラスメイトの声に頷き、棗はボールを投げる。
すると……
……なんと力が入りすぎてガター。
「ぷっ……あはははははは!!!!」
これには棗もクラスメイトも大笑いだった。
「水鏡、フラグの回収上手すぎだろー!!」
「だろ!?さっすが私!!」
(……水鏡は失敗しても、こんな風に笑えるのか)
悠真の口元が少しだけ緩んだ。




