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最後の標的  作者: 有氏ゆず
第四話 誕生日
28/39

4-6




放課後の校門は、いつもより騒がしかった。

部活の掛け声、笑い声、誰かの名前を呼ぶ声。

その全部が、悠真には遠く聞こえる。


棗がいないだけで、世界の音が薄くなる。

今日一日、隣の席は空っぽだった。


クラスメイトの「体調不良じゃね?」という軽い言葉が、ずっと胸の奥に刺さったままだ。




帰り道。

バスを降りた悠真は、夢見アパートへ向かう足を止めた。帰るのが怖かった。


202号室の呼び鈴を押して、扉が閉まったままだったら。それだけで、自分が何をしでかすか分からない。


だから、遠回りするみたいに、駅前の方へ歩いた。

理由なんてなかった。ただ、棗がどこかにいる気がして……探したかった。


夕方の風が冷たく、雲の隙間から細い光が落ちている。

街の端、古い公園の前を通りかかった時だった。




ベンチに、誰かが座っているのが見えた。


黒い髪。

背中を丸めて、膝に肘をついている。

肩が、ほんの少し震えている。


「……水鏡」


悠真が声をかけた瞬間、その肩がびくりと跳ねた。


棗は顔を上げる。

そしていつものように笑おうとして……失敗した。


「……転校生クン?」


悠真は無言で近づき、棗の前に立つ。

棗は立ち上がろうとしたが、足が動かないようだった。


「……学校、休んだな」

「うん。まあ……そうだな」


棗は視線を逸らし、笑って誤魔化そうとする。


「別に大したことじゃない。ちょっと用事があったんだ」




「……嘘だ」


そう言った悠真の声はいつもより低く、まるで威圧しているかのようだった。棗の肩がぴくりと震える。


「……何で」

「お前、目が死んでる」


言ってしまってから、悠真は自分の言葉の刺々しさに気づいた。だがもう、取り消せない。

だけどこのまま棗を放って帰ることは、もっと出来ない。


「……怖いな、転校生クン」


棗は、笑った。貼り付けたような笑みで。

それから、ベンチの端を指で叩いた。


「座りなよ。話してやるからさ」




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