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最後の標的  作者: 有氏ゆず
第四話 誕生日
25/39

4-3




9月7日(火)


朝、悠真はいつもより早く目が覚めた。

窓の外は薄曇りで、空気が少し冷たい。


(……天気が悪いな)


悠真は携帯電話を手に取り、棗とのトーク画面を開く。昨夜は特にやり取りをしていない。

それでも棗との今までのやり取りを眺めているだけで、胸の奥が少しだけ落ち着く気がした。


「……行くか」


鞄を持って部屋を出る。階段を降り、いつもの場所……アパートの下で棗を待った。

いつもなら、すぐに上から足音が聞こえてくる。軽い足取りと、眠そうな声と、苺の匂い。




……だが今日は、何もない。


棗が降りてくる気配がしない。


悠真は腕時計を見る。

まだ時間はある。遅れているだけだ。そう思いながら、視線が無意識に202号室へ向く。


(……寝坊、か?)


そう自分に言い聞かせながらも、胸の奥がざわつく。


悠真は携帯電話を握り直し、短くメッセージを打った。


『起きてるか』




……しかし、暫く待っても既読はつかない。


「……水鏡」


当然、返ってくる言葉はない。

悠真は拳を握り、数秒だけ迷ってから、階段を上がって202号室の前まで歩いた。


インターフォンに指をかける。押してしまえば、踏み込みすぎる。


友達だから、押してもいいのか。




それとも────




結局、悠真は押すことが出来なかった。


バスの時間が近づく。悠真は最後にもう一度202号室を見て、足を止める。

扉は閉じたまま。何の気配もない。


「……遅れる」


呟いて、悠真は一人でバス停へ向かった。




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