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9月4日(土)
昼の12時に駅前のカラオケ屋の前で待ち合わせだと決めていた。
行くと言っていたクラスメイトはもう集まっており、棗は悠真が来るのを待っている。
悠真は駅前のカラオケ屋に向かって歩いていた。いつもの無表情を保ちながらも、胸の中では名前のつけられない感情が渦巻いていた。
自分のために開かれる集まり。組織では、こんな経験をしたことがなかった。悠真は少し緊張しながら、カラオケ屋の前に到着した。
すでにクラスメイトが集まっており、その中に棗の姿が見えた。悠真は無意識に棗を探していた自分に気づき、視線を逸らした。
しかしすぐに、棗の方へ足が向いていく。悠真は棗の前に立ち、小さく頭を下げた。
「……遅れてない、よな」
悠真はぎこちない口調で尋ねた。時間通りに到着したはずだが、悠真は少し不安だった。
組織では、時間厳守は絶対だった。しかしこの場では、もっと緩やかな雰囲気が流れている。
(……水鏡)
悠真は棗の紫色の瞳を見つめ、小さく息を吐いた。
棗と過ごす時間が、悠真にとって唯一の安らぎになっていた。
しかし同時に、悠真の胸の中には冷たい罪悪感が広がっていた。また今日も、棗を殺すチャンスを逃してしまうのだろうか。
「12時ピッタリ!ギリギリセーフだな!」
そんな悠真に対して、棗は歯を見せて笑う。
「予約してた水鏡です。15人大部屋でお願いします」
代表として棗が受付でやり取りし、クラスメイト達を先導する。
「1階の大部屋だって。行こう」
悠真はクラスメイトたちと一緒に、棗の後について1階の大部屋へ向かった。
……部屋に入ると、広い空間にソファが並んでいた。
クラスメイトたちは思い思いの場所に座り、すぐに和やかな雰囲気が広がっていく。
悠真は少し戸惑いながら、棗の隣に座った。
それが悠真にとって一番安心できる場所だったからだ。
「じゃあ初っ端、田中行きまーす!!」
クラスメイトたちが歌い始め、笑い声が部屋に響く。悠真はその光景を静かに見つめていた。
「……水鏡」
悠真は棗に視線を向けながら、小さく呟いた。
「……こういうの、初めてなんだ。どうしたらいい」
「んー、普通に食べて歌ったりして、思うように過ごしてくれたらいいさ」
棗は笑顔で答え、立ち上がる。
「さて、私はちょっと挨拶に行ってくるかな!」




