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放課後。
「で、転校生クン。明日土曜日だけど、暇だったりするか?」
唐突に棗が話しかけてくる。購買で購入したのであろう苺をもぐもぐと頬張りながら。
「今皆で話してたんだけどさ。カラオケでキミの歓迎会をやろうって」
悠真は棗の言葉を聞いて、目を見開いた。
自分のために、クラスメイトが集まってくれるという。
「……歓迎会」
悠真は小さく呟き、棗を見つめた。クラスメイトたちは期待の眼差しで悠真を見ている。悠真は少し戸惑いながらも、ゆっくりと頷いた。
「……ああ、暇だ。行く」
悠真は短く答えた。組織では、任務以外の予定など存在しない。
しかし今、悠真には友達ができ、その友達と過ごす時間ができた。悠真の胸の中で、温かい感覚が広がっていく。
カラオケには悠真は行ったことがないが、棗やクラスメイトと一緒なら楽しめるかもしれない。
しかし同時に、悠真の胸の中には冷たい罪悪感も広がっていた。
こんな風にクラスメイトと親しくなって、棗との時間を増やして……それは任務遂行を遠ざけることになる。
────10月1日までに棗を殺さなければ、自分が死ぬ。
その事実が、悠真の心を重くしていた。悠真は拳を握りしめ、棗の笑顔を見つめる。
(……まだ、まだ時間はある)
……その呪文が、もう意味をなさなくなっていることに、悠真は気づき始めていた。




