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最後の標的  作者: 有氏ゆず
第三話 ともだち
17/39

3-2




午後の体育の授業は、悠真にとって息苦しい時間だった。


身体を動かすのが嫌いなわけではない。ただ、理由の分からない緊張が、授業の始まりから終わりまで、薄く張り付いて離れない。


原因は分かっている。

棗が、そこにいるからだ。


「転校生クン。うちの体育はそこそこ厳しいけど、頑張ろうな」

「……ああ」


ポンと背中を叩いてくる棗に、悠真は曖昧な返事しか出来なかった。




(……何だ、これは)


準備運動をしながら、悠真は無意識に棗の方を見てしまう。

笑っているわけでも、特別なことをしているわけでもない。ただ、そこに立っているだけなのに、なぜか目が離せない。


棗は気づかない。

悠真が視線を逸らす、その一瞬の速さにも。


空は朝から重たく、雲が低く垂れ込めていた。

教師が「雨、降らなきゃいいけどな」と呟いたのを、悠真はぼんやり聞いていた。




「よし、準備運動終わったな!次は走り込みだ!」

「えー!マジかよ!!」


生徒達の不満の声と共に走り込みが始まり、校庭に規則的な足音が広がる。

湿った空気が肌にまとわりつき、呼吸が少しだけ重くなる。


「ほら、走れ走れ!サボるなー!」


体育教師が叫び、生徒たちは不満をぶーぶーと口にしながらも走る。


「ほら、頑張れ皆!」

「おいおい水鏡も教師側かよ!」

「ふふっ、だって走るの楽しいじゃないか!なあ、転校生クン?」


棗はケラケラと笑いながら走る。

悠真は俯いて、何も言えなかった。




……そのとき、ぽつ、と頬に何かが当たった。




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