3-1
次の日、9月3日(金)。
悠真のスマートフォンに棗からのMINEメッセージが届く。
『起きたか?眠れたか?』
『下で待ってる。一緒に学校行こう』
悠真はスマートフォンの通知音で目を覚ました。ベッドの上で身体を起こし、画面を確認する。
昨夜は珍しくよく眠れた。棗のメッセージを読み返してから眠りについたからかもしれない。
悠真は素早く着替え、制服を整えた。鏡の前で髪を軽く整えながら、自分の顔を見つめる。いつもと変わらない無表情──しかし悠真は、自分の目が少しだけ柔らかくなっているのに気づいた。
そして、棗への返信を打ち込む。
『起きた。よく眠れた』
『わかった。もう出るから』
送信ボタンを押してから、悠真は窓の外を見つめた。朝日が街を照らし、新しい一日が始まろうとしている。
悠真は鞄を持ち、301号室を出た。
「……よっ、おはよ」
先に下で待っていた棗が片手を上げ、微笑みかけてくる。
「悪い。待たせた」
「全然。時間的には余裕だからな」
そう言いながら二人は横並びでバス停まで歩き始める。歩きながら苺を口に放り込む棗を見て、悠真は怪訝そうな目で見つめた。
「何で歩きながら食うんだ」
「あー、これ朝食のデザート。キミも食うか?」
言いながら棗は悠真の前に苺を差し出してくる。
(……これは、どうするべきなんだ)
一旦手で受け取るべきか、それともそのまま棗の指から口に咥えるか……どうするのが正解なのか悠真には分からなかった。
「ほら、美味いぞ」
悠真が戸惑っていたのを察してか、棗がそのまま悠真の口に苺を放り込む。
「んっ……」
口に放り込まれる瞬間、一瞬だけ舌に棗の指が当たったような気がする。
(水鏡の、味)
……そう思ってから、自分でも気持ち悪いことを考えてしまったと、自己嫌悪する悠真。
そんな心境には当然気づかず、棗は笑って問い掛けてくる。
「美味いだろ?私の大好物なんだ」
しかし何も答えない悠真に、もしや苺が苦手なのではと棗は考え始める。
「あー……苺、嫌いだったのか?」
「いや、美味、かった」
棗を誤解させたくなくて、急いで返答する。変な喋り方になったかもしれないと悠真は後悔したが、棗は気にせず嬉しそうに笑った。




