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最後の標的  作者: 有氏ゆず
第二話 繋がり
15/39

2-7




「あのさ、私たちもう友達だと思ってたんだけど、違うのかよ」


ショックだわ……と棗は続けて、肩を落とす。


悠真はその言葉を聞いて、目を見開く。


友達──その言葉が、悠真の胸の中で何度も反響する。

組織では、仲間という概念はあっても友達という概念はなかった。任務を共にする者、訓練を共にする者、ただ、それだけだったから。




「……友達」


悠真は小さく呟き、棗の顔を見つめた。頬が少し熱くなっているのが自分でも分かる。

悠真は視線を逸らし、窓の外を見つめた。バスは夢見アパートへ向かって走っている。夕日が街を赤く染めていた。


だから、自分の頬がほんの少し赤いのも、夕日のせいに違いない。


「……ああ、そうだな。俺たちは、友達だ」


悠真がその言葉を口にした瞬間、悠真の胸の中で温かい感覚が広がっていく。


しかし同時に、悠真の胸の中には冷たい罪悪感が広がっていた。

この人を、友達を、10月1日までに殺さなければならない。殺さなければ、自分が死ぬ。


悠真は拳を強く握りしめる。


(……いや、まだ時間はある。焦ることはない)


そう自分に言い聞かせながら、悠真は窓に映る棗の横顔を見つめ続けていた。









……夢見アパートに着き、棗は自分の部屋である202号室へと向かおうとするが、ふと足を止める。


「あ、そうだ。友達ならMINE交換しないか」


悠真は棗の言葉を聞いて、3階へ向かおうとする足を止めた。


「……MINE、か」


悠真は小さく呟き、ポケットからスマートフォンを取り出した。組織から支給された端末だが、任務のために一般的なアプリも入れられている。

悠真はぎこちない動作でMINEアプリを開き、QRコードを表示させた。


「……これで、いいのか?」


悠真は棗に画面を向けながら尋ねる。こんな些細なやり取りが、悠真にとっては新鮮だった。

友達とMINEを交換する。普通の高校生なら当たり前のことが、悠真にとっては初めての経験だった。


「……ん。これでおっけーだな」


棗は画面を見せて笑い、そのまま202号室へと入っていく。


「じゃ、また明日な!」




悠真はそのまま、しばらく動けなかった。自分のスマートフォンを見下ろし、画面に表示された棗の名前を見つめた。


水鏡棗──友達として登録された、初めての相手。


「……また、明日」


閉まった扉に向かって悠真は小さく呟く。

そして悠真は階段を上り、301号室へと向かった。


ドアを開けて部屋に入ると、がらんとした空間が広がっている。

組織が用意した部屋は、最低限の家具しかなく、生活感がまったくない。


悠真はベッドに腰を下ろし、スマートフォンを握りしめた。

棗との繋がりが、この小さな画面の中にある。


悠真は棗のアイコンをタップし、トーク画面を開いた。何も送られていない、真っ白な画面。

何か送ろうかと考えたが、何を送ればいいのか分からなかった。




『やっほー、転校生クン』


その時、棗からのMINEが届く。


『今日はちゃんと寝るんだぞ』


悠真は慣れない動作でキーボードを開き、返信を打ち始めた。

何を送ればいいのか分からず、何度も文字を消しては書き直す。


『ああ、今日はちゃんと寝る』


送信ボタンを押した後、悠真は自分のメッセージを見つめた。

そっけない返信だっただろうか。これでよかったのだろうか。


悠真は少し考えてから、もう一文を追加した。




『今日は、ありがとう』




送信ボタンを押してから、悠真は顔が熱くなっているのに気づいた。


こんな些細なやり取りで、どうしてこんなに胸が高鳴るのだろう……。悠真はスマートフォンを握りしめ、棗からの返信を待つ。


窓の外は完全に暗くなり、街灯だけが道を照らしている。

悠真の部屋は薄暗く、スマートフォンの画面だけが明るく光っていた……。




第三話へ続く……




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