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最後の標的  作者: 有氏ゆず
第二話 繋がり
12/39

2-4




「……仕方ないなあ。ほら、キミもこっち来い。もうこうなったら全員まとめて面倒みてやるよ!」


悠真は棗の言葉を聞いて、わずかに躊躇した後、立ち上がる。

棗の周りに集まるクラスメイトたちの輪に加わることは、任務において不必要な行動だった。しかし悠真の足は、自然と棗の方へ向かっていた。


棗の近くに立ち、ノートを広げる。棗が丁寧に数学の問題を解説していく様子を、悠真は無言で見つめていた。棗の声が、教室に響く。


「……分かりやすいな」


悠真は小さく呟きながら、棗の横顔を見つめた。周囲のクラスメイトたちが「そうだよな!」と同意する中、悠真の視線は棗だけに注がれている。






『もう、慣れちゃったからな』






昨日の、少し寂しそうに呟かれた棗の言葉が悠真の頭の中に反響する。


この人は、いつも誰かのために笑っている。自分の寂しさを隠して、周囲を明るくしている。


(そんなやつを、俺は殺そうとしているのか)


悠真の胸の中で、温かい感覚と冷たい罪悪感が混ざり合っていた。棗の説明を聞きながら、悠真は無意識に棗との距離を縮めていた。





「全く!私が賢いからってキミらは毎日私を頼りすぎだ!」


大笑いしながらクラスメイトに怒るふりをする棗。だが、本当に怒ってなんかいない。頼られるのは嬉しいことなのだ。


棗は悠真を振り返って、歯を見せて笑う。


「まあそういう訳だから。転校生クンも何かあったらいつでも頼ってくれ」


悠真は棗の言葉を聞いて、わずかに目を見開く。


「頼ってくれ」……その言葉が、悠真の胸に深く刺さる。

組織では、誰かを頼ることは弱さの証だった。自分一人で全てを解決し、感情を殺し、任務を遂行する……それが悠真の生き方だった。


だが、棗は自分に頼れという。頼るということを許してくれる。


「……ああ」


悠真は短く答え、視線を逸らした。顔が、少しだけ熱い。


周囲のクラスメイトたちが笑いながら棗に感謝する中、悠真だけは無言で立っていた。

しかし悠真の胸の中では、温かい感覚が広がっていた。棗の笑顔、声、そして優しさ。その全てが、悠真を人間に変えていく。




……そして、ホームルームが終わり、一時間目の授業が始まる。


悠真は自分の席に戻りながら、棗の横顔を見つめていた。

自分は棗を殺すために近づいているのに、棗は何も知らずに優しくしてくれる。この矛盾が、悠真を苦しめていた。


「……また明日でいい」


悠真は小さく呟きながら、教科書を開く。

しかし文字は頭に入ってこなかった。頭の中は、棗のことでいっぱいだった。




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