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転校生としての幼馴染

作者: 霧間愁
掲載日:2025/11/14

 僕、というのも憚られる小生、いやアッシ、いやおいどん、おいらからの一回りして、ボクことボクちん様には、幼馴染みがいるのだが、これまたどうしてボクちん様と負けず劣らずの変わり者だ。

 ボクちん様は、中身はぶっ飛んではいるもののちゃんと「自分のネジは二三本抜け落ちているし、あとのほとんどは緩みまくっているという事」を自覚しているし、外面をよくしておけば多少中身が狂気で満たされていても問題なく生きていけるということを理解している。

 同級生たちに「あ、おはよう」と挨拶をされれば、人当たりの良い感じで「あ、おはよう」と返答はできてしまう。ただ返答しながら、昨日に考えた林檎に続くしりとりで「ゴリラッパ」とは一体どういう生き物もしくは概念なのだろうかという想像で楽しんでいるくらいには狂人なのだ。

 ちなみにゴリラッパとはバーチャル的なユーチューバーがゴリラでラップしているところを見てしまったので、ヒップなホップなラッパーの線は消えている。この苦行は、この世に存在しない物を想像して楽しむ一人遊びなのだ。

 つまり、いるものを想像しても、それは行き過ぎると誹謗中傷になりかねない危険な行為。

 ちなみに最有力候補は、トルコという国で最低な金の稼ぎ方をしたとき使われる現地のスラングで、言われたら傷つくもしくは怒っても仕方ない単語20位以内に入る言葉という設定だ。

 もちろんそんな言葉はない。


「おはよう」


 透き通った声というのは彼女の為にあると思う。

 いや、透き通るとは透明という意味合いが強いと思うのだが、そうなったら見えんという事だから聴覚に置き換えると聞こえんにならんのか?

「あぁおはよう」

 妄想はさておいて返事はしておく。しないと怒られるから。

「まぁた、朝から考え事?」

「え、あぁうん。そだね」

 まずい、彼女は不機嫌になりつつある。怒らせると怖い。

 彼女はボクちん様の幼馴染で、その昔のボクちん様の想い人だったりする。今は、……高嶺の花というところだろうか。

 声もいいが、顔もいい。なんならスタイルもいい。ラッキーなスケベでつい最近、彼女の成長具合を確かめる羽目になったのだが、発育は順調だ。そのあと、ちゃんと叱られた。

 家の扉を開けて、学び舎に向けて歩いていると、毎日彼女は僕……ボクちん様の隣を歩く。

「今日は?」

「え、ああぁっと」

 ボクちん様と同じくらいには彼女は狂っているので、何かしら変な要求をしてくる。

 例えば、今日の彼女とボクちん様の関係属性だ。

「転校生かな」


「わかったわ」


 今日のワンコならぬ今日の属性である。

 ボクちん様の何の考えないしの一言で、彼女は小走りに先に行く。曲がり角を曲がって姿を消した。

 そしてボクちん様がその角を通りかかると、体当たりをしてきた。

「ゐたたた。もう、何なのよ。遅刻しちゃうじゃない!」

 遅刻はしない。そんな時間ではないのだ。

「なに?謝りなさいよ、レディに当たったのよ。謝罪が普通じゃない?」

 どうやらツンツン属性も乗っけているようだ。デレデレだけでいいのに。

「ごめん」

「あ、もうこんな時間じゃない。それじゃ」

 彼女は駆けだす……と思ったが、数十歩かけた後トボトボと戻ってくる。

「転校生はなし。パンもないし」

「なんで?」

「なんでも」

 どうやら、パンを咥えていないのは美学に反するようだ。そういえばこの間の「妹」でも、却下されてしまった。ボクちん様は腕を組むオトメゴコロ難シイ、マヂムジィ。

「教室に着いたら、で開始でいいなら……」

 俯きながら彼女の中で最大限の譲歩がそこだった。

「うん、もちろん」

 爽やかな返答だが、まぁまぁにイかれた会話の流れなのでただの変態だということは自覚していた。


 「ねぇ、教科書見せてくれる?」と幼馴染は机をくっつけてきた。

 なるほど転校生の初日あるある、教科書が違うくて借りるパターンだ。ふむ、確かにこれはありえるな。

 「ねぇ、行内案内してくれない?」と幼馴染は学校の案内をせがんできた。

「今日、朝アンタとぶつかったせいで先生からの案内をされなかったのよ」

 うん、こういうのもほぼ強制イベント。わかる。

「あと、食堂で奢りなさい」

 転校生がツン属性持ちは解る。が、タカりは違うくない?

「チャールズ・ケイ・オグデンを買ったら、今月のお小遣いなくなっちゃって……」

 急な幼馴染みだった。唐突な幼馴染みで、鳩な豆鉄砲なボクちん様は、無言で頷いた。健全な高校生はオグデンはない、天才謎の転校生でもそのチョイスはない。あと、物語的なわかりやすい天才は大体理系なので、文系の書籍をさらっとブツケてくるんじゃない。

 そもそもこの属性付与遊び通称、エンチャントごっこを始めたきっかけは、彼女から言い出したのだが思い返せば、他の友達や同性の友人たちと仲良く鳴り始め、少しずつ距離が離れていく……というタイミングで彼女は眠っていたボクちん様の部屋に乗り込んできた。イン窓。

 「金縛り?」と目を開けると、彼女がKAKE布団上から馬乗りになって、泣いていた。

 これは友人宅にて映像で観た騎……いや泣いとる彼女、……ん?なんだポケモンか。

「ぎらいになっだ?」

 エロと任天堂の思考で揺れていたその時のボクちん様は、彼女がまぁまぁポケモンよりの鳴き声で任天堂に傾いた思考のまま返事をした。

「嫌いにならないよ」

「ぼんど?」

 木工用か速効性。アロンなアルファが彼女の涙腺を固めてくれのか涙が止まっていく。

「ほんとほんと」

 それはいい、それはいいのだが、彼女の鼻から出た水がそろそろボクちん様の掛け布団に落ちそうなので、かんでほしいなとか考えていた。

「また変なこと考えてる?」

「え?あはい」

 回想はさておいて、そこで交わされた約束は幼馴染みの約束つまるところ、幼約馴染書として爆誕したのだ。すまんな、正岡さんちの子規くん、漢字表記だから許してくれ。


 幼馴染みの彼女が笑ってくれてるなら、それでいい。

 ボクちんさ……僕はそれがいい。

 明日は、幼馴染みはなにになるんだろう。


 食堂で美味しそうにご飯を食べる幼馴染みは、転校生。

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