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死なずの国  作者: 群星
第一章、旅立ち
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鳴動


「馬まで貰えるとは……。色々と済まないな、スファル」

「いえ、殿下の御為ならば。お役に立てますこと、光栄にございます」


 翌日。メサの門にはアフラ達四人を見送りに、スファルをはじめ街の政務官や使用人の親子、ニーシュブルの治療をしたメイス医師が集まった。


「どうかお元気で。お体にお気をつけくださいませ」

「殿下……ほんとうに、ありがとうございました」

「良いんだよ。また会えたら、お茶を淹れてほしいな」

「はい……!」

「ティール殿、今までご助言をいただきありがとうございました。貴方には及びませんが、政務官一同、スファル殿をお支えいたします」

「いやいや、何を仰るか」

「いやいや……」


 アフラとティールが様々な別れの言葉を交わす一方、ニーシュブルはメイスの小言に耳を塞いでいる。


「ちゃんと聞かんか! お前の体の小ささで持ち堪えたのは奇跡なのだぞ!」

「分かってるってば! 世話は焼かんとか言ってたくせにすっごくお小言多いよ!」

「まあまあ……。メイス殿、俺も聞いておりましたから、その辺りで」

「ふん。お前は……ティールの友人だと聞いたが」

「はい」


 メイスはアルカイオスをじろじろと眺めると鼻を鳴らす。


「あいつの奇行は治っとらんのか」

「……ええ、まあ」

「するならせめてこいつの目に入らんところでさせろよ」

「心得ております」

「奇行ってなに? 脱ぎ癖のこと?」


 神妙に頷いたアルカイオスだったが、ニーシュブルの一言に目を剥いた。


「見た……やったのか!? あいつは!?」

「朝起こしに行ったら全部脱いでましたよ」

「──ティール!!!!」


 アルカイオスの怒声が再び響く。

 こうして。アフラ、アルカイオス、ティール、ニーシュブルの四人はメサの街に別れを告げ、西への旅がいよいよ始まったのだった。











 は、は、と荒い息が空洞に響く。


「導師! やりました! 不死の血を手に入れましたぞ!」


 洞窟には黒いフードを纏った者達が中央にある篝火に座る人物を囲んでいる。篝火は灰色で、どう見ても普通の火ではない。導師と呼ばれた篝火の老人は、駆け込んできた人物が跪くとゆっくりと立ち上がった。


『此度は……上手くいったようじゃな』

「はっ。追放された身であれど、腕は確かだったようで……」

『獲物に執心する余り、背後にすら気付けなかったようじゃが……所詮、偽りの民よ』


 老人は男から短剣を受け取ると、短剣を掲げ刃先を下に向けると口を開く。柄の中央に爪を立てるように力を込めると、先端に赤いものが伝い、滴り落ちた。


『…………おお……!』


 灰の篝火が大きく弾けた。燃え上がり、唸り声を上げる。


『やはりあの王子は真の不死であったか……』

「遂に不死が……!」

「この日をどれ程待ったことか……」


 老人は血を飲み干すと大きく手を広げる。


『皆、よくぞここまで耐えた。偽りの時代は終わりを迎える。魔王様の復活は成され、暗黒の世が訪れる!』

「おお……!」

「導師よ……導師サッバーフよ!」

「我ら闇の使徒、共に参りましょうぞ!」


 篝火がごうごうと燃え盛る。その歓喜は地響きのように静かに、しかし呪詛のように鳴り止まない。


『偽りの民に死を! そして、新たなる世界の為に我ら闇の使徒は不死と成らん! 狙うは──天嶺の三貴子よ!』

 

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