第六話『自覚無しの自覚症状』
「はっ!?」
風呂場でぶっ倒れたナラが目を覚ますと、そこは宿屋のベッドの上。隣にはスヤスヤと眠るミルの姿が。風呂に浸かりすぎたなとガタイで分析。どうやら風呂に入っていたところの記憶は曖昧になっている様子である。
「……何してたんだっけ……?」
必死に思い出そうとするが、完全に覚えていない。とりあえず腹が減ったので、適当に何か食べようとミルの持っていた鞄を漁る。
「あ、ジャーキーだ」
とりあえず口に含んでみるが、何とも言えないえぐみが口の中に広がっていく。呑み込めない程不味い。仕方が無いので、食いかけのを鞄に戻し、口に含んだ分は吐き出す。
「うぅ……、腐ってんじゃない?」
他に何かないの?と思い鞄を漁っていると、今度はどんぐりを発見する。どうやら趣味で集めているらしい。どういう趣味なのかと思ったが、見ているとなんだか食べたくなってくる。
「……」
人としてこんなもの食っていいのか?とは思ったが、食欲には勝てずボリボリ齧り始める。
「おっうめっ」
木の実がとても美味しかったので、全部食ってしまったナラ。腹も膨れたのでさっさと寝るが、なんかもうこの時点で戻れないのでは……?と勘ぐってしまうだろう。ナラは自分が男だと理解しているだけで、本能的にはリス娘に近いのだから。
「おはよ。起きて」
「……あ、おはよう……」
そんな訳で、朝になったのでミルはナラを起こし飯を食いに行く。近くに良い店があると言うのだ。早速行ってみて試してみたが、なんというか口に合わない。どうやら肉はとことん口に合わないようだ。
「うぅ……」
「大丈夫?」
「……多分、お肉受け付けないんだと思う……」
「そう。……次からは野菜で美味しいとこに行こ」
ミルも、色々食べられない物はあるので、その辺の理解はある。とりあえず金だけ置いて帰る事にした二人。
「今度は美味しいどんぐりのお店にでも行こ?」
「う、うん……。ありがと……」
なんだか不便な体だなぁとか思いながら、ナラはそもそもどんぐりを食べればいいから別にいいかとも考えていた。自分で気づいてはいないが、もうとっくの昔に戻れないところまで進んでしまっているのだろう。
「……」
なんだか嫌な予感を覚えながら、とりあえず美味しい木の実を売っている店に行く事になった二人なのであった。