第五十七話『飢え、乾き、満たされず』
「……」
ラブホから出て来る二人。どことなくゲッソリしているナラと、もう凄いツヤッツヤのミル。一体この一晩で何があったのだろうか。まぁ言わずとも大体分かるだろう。そんな訳で家に帰る前に、鍵を取り出し部屋に入る。
「そう言えばミルはどんな部屋に入ってるの?」
「……私は、なんか変な部屋にいる。普通の魔法を鍛えながら、Aの使い方を模索中」
「そうなんだ。僕は……まぁ、凄く強い敵がいるだけの部屋かな」
そして、今日もまた殺されるナラ。今日は心臓を抜き取られて死んだ。頭への一撃は普通に避けれるようになってきたが、体が上手く動かない。なぜかまだ馴染んでいないような感じがするのだ。その辺はどうしようもないので、まだ部屋にいるミルより先に家に帰ろうとする。
「おーい!久しぶりだなー!」
「うわっ!?」
その背中を、クマが直撃する。腰を抑えながら立ち上がるナラに、更に覆いかぶさってくるようにやってくる。クマはクマパーカーを着ている感じで、肌触りがとてもいい。そんな事を考えながら、何故ここにいるのか質問するナラ。
「く、クマか……。なんでいるの?」
「クマね!鼻が良いんだ!だからすぐわかったぞー!」
「そ、そうなんだ……、ちょっと重いから退いて……」
「むー!分かったのだ……」
そう言ってナラから降りるクマ。ここで会ったのも何かの縁と言う事で、一緒に孤児院に向かう。孤児院では、シスターがクマの事を探しているようであった。
「クマ!どこに行ってたのですか?!」
「ナラのところに!」
「一人で行ったら危ないでしょ!……次からはちゃんと私に声をかけてから行ってくださいね?」
「分かったー!」
何やら誇らしげなクマに対し、滅茶苦茶心配しているシスター。なんだかんだ仲は良いようだ。とりあえず今日は一旦挨拶だけにして、一度家に帰るナラ。クマはそんなナラの様子を、後ろから眺めていた。
「……全く。心配したんですからね?」
「ごめんなのだ……」
「それにしても……。彼女は一体?」
「ナラなのだ!良い人なのだ!」
「そう。……好きなの?」
「?よくわかんないけど好きなのだ!」
そんな会話をしながら、孤児院の中に入っていく二人。一方その頃、ナラは二日酔いしているギンを目撃していた。
「頭いてぇ……。なんかガンガンする……」
「ギン、大丈夫?」
「あぁ大丈夫だがよ……。酒は控える事にするぜ……」
「そりゃ一升瓶一つ空ければそうなる。……むしろ死ななかったことに感謝すべき」
「はいはい……。あ、ミルは?」
「もうすぐ帰ってくるんじゃない?」
「皆、大変だ」
ソファーで寝ているギンを尻目に、ミルが帰ってくる。それはいいのだが、何やら大慌てでこちらにやってきている。何事だと思っていると、その手には一枚の紙が綴られていた。
「依頼だ」
それはギン当ての依頼。難易度特Aクラスの、激ヤバ依頼だった。




