第二話『リスもふ、ネコもふ』
「う……」
ナラクが二度目に目を覚ました時、目に映ったのは知らない天井であった。
「……知らない天井だ」
「あ、起きた」
そう思っていると、奥から声が聞こえる。幼い少女の声だ。誰だろうと思っていると、そこにいたのは身長130㎝程度しかない、白い猫耳の魔法使いだった。彼女はナラクが目覚めたのを確認すると、ベッドの隣にちょこんと座る。
「名前は?」
「えっ?」
「名前、言える?」
「え、えっと……。僕は……」
と、ここで言葉に詰まってしまうナラク。このナラクと言う名前のせいで、かなり今までひどい目に会ってきたナラク。魔王さえ退治すれば、汚名返上出来るかと思っていたのだが、今の体ではそれを言っても伝わらないだろう。なので嘘をつくことにした。
「な、ナラです」
「ナラ。分かった」
そう言うと、少女も自分の名前を明かす。後ろで動く白猫尻尾が可愛い。
「私は『ミル』。よろしく」
「あ、よろしくです……」
名前を紹介したミルは、魔法でコーヒーカップを二つ、自らの元に引き寄せると、それを飲ませてから話を聞く。ちなみにミルは飲む前に大量の砂糖とミルクを入れていた。
「んぐ……。なんか苦いですね……」
「コーヒーだからね。それより、どこから来たの?」
「……実は、分からないんです」
「……そっか」
色々嘘を付いてきたナラだが、こればかりは本当である。と、ここで顔しか確認していないのを思い出したナラは、鏡を見る。
身長は大体120㎝くらいだろうか?茶色の耳に、自分の体より大きいふわふわの尻尾。人間の頃と違う、愛くるしさと幼さを兼ね備えた顔。完全に女の子になってしまっていた。当然、今まで一緒に旅をしてきた童貞のアレも存在しない。
「……」
「服着る?」
ミルは、鏡の前に行ったのを服が無いからだと思ったのか、自分のクローゼットの中にある服を出す。確かに裸だったナラは、ありがたく服を頂戴する。……だが、似合う服はともかくズボンやスカートが無い。デカい尻尾が邪魔をするのだ。
「仕方ない。パンツだけ履きなよ」
「うぅ……」
何と言うか、辱めを受けているナラ。パンツを履いたところで、今まで感じ取れなかった尿意が襲ってくる。
「あ、あのトイレは……」
「下にあるよ。ついてきて」
何とか下まで我慢し、トイレにたどり着いたナラ。……が、忘れていた。実は男性よりも女性の方が、お漏らしをしやすいのだと言う事に。トイレに着いたと言う安心感からか、そのままジョバジョバと垂れ流し状態に。
「……」
「……」
二人は顔を見合わせ、ナラの顔は段々と赤く染まっていく。
「……替えのパンツ。お願いします」
「……ごめん」
気まずい雰囲気の中、ナラは二枚目のパンツを履き替えるのであった。