第十五話『襲われて、三人目』
「おい!あぶねぇぞ!」
「うわぁっ!?」
飛んできた物は槍。顔スレスレを飛んで行った槍に、思わず尻餅をついてしまう。
「おい逃げろ!ヤバいぞアレは!」
「あ、あわわ……」
そして、槍を投げて来たであろう相手はと言うと、銀色の髪をたなびかせた狼娘であった。腰を抜かしているナラに近寄ると、後ろにいたデカいイノシシに刺さった槍を抜き、そのままナラの顔を一瞥した後ズルズルと猪を引きずっていく。
「た、助かった……の?」
「さぁな……。それより早く逃げた方が良いぜ!」
その一言に、何とか走るナラ。その後ろ姿を、狼娘は見えなくなるまで見続けていた。……と言う事を、ミルに報告する。
「なんか知らねぇが狼娘が襲ってきたんだよなぁ」
「そ。大丈夫だった?」
「うん……。一応……」
何とか夜になったところで、どっちかが火の番をしなければならないので、先にナラがやる事に。昼過ぎに襲われた事で、若干怯えている様子だが、まだアレは後ろにいた猪を相手にしてたのだと思う事で、平穏を保っていた。
「で、伝えてなかったんだけどよぉ」
「何?」
「んまぁ、前に俺がポーカーの役で強い技を出すって言ったろ?アレちょっと弊害があってさぁ……、一回使った札は、全部の札を使うまで使えねぇよって話」
「あぁ……。って事は、一回強い技使ったら、二度目は厳しいって事?」
「そう言う事だ。お前が賢くて何よりだよ」
キングが出す技は、一回出すと二回目は出しにくいと言う物がある。当然、強い焼くばかりではなく弱い役も出来る事がある。その時でも、使わなければダメなのである。
「中々難しいんだねぇ」
「ま、そんな難しく考えるなって。それよりそろそろ火の番交代じゃね?」
「そう言えばそうだね……」
そんな訳で、テントに手をかけたその時、焚火に槍が突き刺さる。何事だと確認すると、目の前に先ほどの銀色狼娘がやってくる。
「なっなんだぁっ!?」
「グルル……」
何とか応戦しようとキングを構えるが、その前に思いきり蹴り飛ばされ連れ去られてしまう。
「ミル!早く来い!」
「『重力追加』!」
そして、ミルもまた魔法で応戦するが、凄まじいスピードでそれを避けられ、暗闇の中に消えていく。
「……なんだあいつ?!」
「分かんない。でもすぐ追う!キング力貸して!」
「おうともよ!」
攫われたナラを追うミルとキング。一方その頃、ナラと狼娘はと言うと、その狼娘の寝床に寝かされ、襲われかけていた。
「俺の……嫁になれよ……」
「ぴにゃぁっ!?」
主に性的な意味で。