第十二話『もふもふ、モフモフ、尻尾』
「はーっデカい尻尾もふもふもふもふ!!!」
「やだぁ!ぴぃっ!?」
「うひょひょ~!!ええじゃないかええじゃないか~!!」
ミルがこの師匠の事が嫌いな理由は、とにかくもふもふ大好きであると言う点。異常なほどに好きなのである。何せもともと人間だったのに、もふもふが欲しいと言う理由で狐娘になる事を決めたと言うもふもふ狂いなのだから。
「うぉっこのもふもふ犯罪かよ……、リスもふ最高だなこりゃ」
「うわっ変態だ!助けてくれミルーっ!俺は動けないんだーっ!」
「てめぇこのクソ師!」
「げっミル!」
スタンバっていたのか、扉を蹴破り入ってくるミル。今度という今度は許さないぞ!と言う感じでタマの顔面を思いきりビンタする。普通の人間なら歯の三本位へし折ってるレベルである。だが、流石にミルの師匠。これだけの威力で殴っても傷一つ無い。
「あー……。嫉妬?」
「は?」
結構ガチめなは?が出たが、そんな事を気にせず言葉を続ける。なぜこんなちょっかいをかけてくるのかと、そしてなぜこんなブチ切れているのかとナラが思っていると、タマはいきなりこんなことを言い出してくる。
「いや我、こやつと結婚するし」
「は?殺すぞクソ師匠」
思ったよりガチで殺そうか考えているらしいミル。だが全く意に介していない様子で、へらへらとしている。ミルはナラを抱きしめると、威嚇し始める。まるでナラが自分の物だと言う様に。
「おっ、威嚇しちゃう~?」
「幾ら師匠でも絶対に渡さない」
なんだか大変な事になっている状況に、何も言う事が出来ないでいるナラとキング。とりあえず一旦二人を落ち着ける為に、どういう事になっているのか問いただす。
「いやその……。どういうこと?」
「……。私が師匠に、ナラと結婚するって言ったら、なんかいきなり『結婚するまでは実質フリーみたいなもんか』とか言い出した」
「で、一目惚れ&もふもふだからじゃな!」
謎のドヤ顔でそう言い放つタマ。これは確かに正気か?と言っても仕方がないところはある。ミルがタマにチョークスリーパーを仕掛けたところで、とりあえずナラは風呂を焚くことにした。このままではラチが明かないと感じたからである。
「なんかヤベェなアイツら……」
「そうだね……」
「ところで、俺の能力についてもう一回聞くか?」
「……じゃあ一応聞いておこうかな」
「おうよ!んまぁ俺を振るう際、ポーカーの役を作って振ると、役に応じた強さの技が出るんだ。ただまぁ……、お前ロイストフラ決めた時、ほとんどギリギリだったろ」
「……。僕、凄い弱いみたいだから……」
「ま、その辺は鍛えて行こうや。今はさっさと風呂沸かしちまおうぜ?」
三十分後、風呂は何とか焚けたのだが、二人も一緒に入ってきたせいでミッチミチになっていた。