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おはよう~未希成園から  作者: 希与実
14/15

13.成長

 利光はその場の雰囲気を察した。

 そして祥吾に合図する。

「若菜お姉ちゃん、ちょっとあそぼ、すこしあそぼ」

 祥吾は若菜の手を握って引っぱる。

 利光と3人でその場を離れるように歩き出した。

 そしてその歩いた先には光星と輝義が。

「えっ?また俺をおいまわしてるのか」ナルシスト輝義。

「だから・・」あきれる若菜。

「お兄ちゃん、一緒にブランコ乗ろ」

 祥吾は光星の手を握って引っぱり、ブランコの方向へ誘導する。

 最初は困惑していた光星。

 でも祥吾のその無邪気さに心が揺れる。

 ありがたい。

「よ~し」

 二人は手を繋いだまま、ブランコ向かってまっしぐら。

 あっちでは雅代と静香。

 またそっちでは輝義と若菜。

 またこっちでは祥吾と光星。

 その様子をオドオドしながら、足も笑いながら見てどうすることもできない朱里。

『プ~~』

 その朱里の様子を見て、笑いが吹き出す清美。

 その方々の光景をいつの間にか園長室に来ていた順子が、園子と一緒に眺めていた。

 その日の夕日は、ゆっくりと穏やかに落ちていくような気がしていた。

「どう?落ち着いた?」

「はい」

 園子と順子が園長室で言葉を交わす。

「これからも頼むわよ。筆頭保育士として」

「園長」

「どう?あの光景をどうみる?」

 二人は方々の様子をマジマジと確認する。

「それぞれの形で、それぞれの境遇で私たちは生きてる。どれも一緒じゃないし、誰でもいっぱい悩みを抱えている。人から見たら、なんだそんな事?なんてことも、当の本人にしてみれば、それはそれはこの世の終わりのような悩みだったりもしてさ。結局その人がその大きさを決めるんだよね」

 下を向いたまま何も発せない順子。

「今日はちょうど、それぞれが悩んだ後にそれぞれが解決できた。ちがうな。それを受け入れられた、ってことですかね。時は最高の薬。少し離れて時の流れを見れば人は変われる。かもね」

「まだここに居ても良いのでしょうか」

「それを決めるのは園長である私の仕事。もう云ったよ」

「はい」

『コンコン』園長室のドアを叩く音がする。

 順子はドアに行き、扉を開く。

 その先には深々と頭を下げる雅代。

「どうぞ、お入りください」

 雅代は入室し園子に向かってまた頭を下げる。

「ささ、お掛けになって。高城さんも」

 雅代、順子が各々席につく。

「園長」雅代が切り出す。

「私の考えが間違っていなければ、あの一件についてはもう何も云う必要はないかと思います」

 雅代は大きく首を縦に振る。

 園子は笑みを浮かべる。

「光星君と輝義君は明日から?」

「いえ、週末に引っ越しがありますので、月曜日からまたお願いしたいと思っています」

「そうですか」

「その際は、ぜひ高城さんにも見ていただければ」

 順子はその会話を聞き安堵する。

「大変でしたね、この数日は」

「はい」

 あの時の勢いは雅代には無かった。

 時が経てば状況も変わる。

 人も変わる。それを実感した数日間だった。


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