13.成長
利光はその場の雰囲気を察した。
そして祥吾に合図する。
「若菜お姉ちゃん、ちょっとあそぼ、すこしあそぼ」
祥吾は若菜の手を握って引っぱる。
利光と3人でその場を離れるように歩き出した。
そしてその歩いた先には光星と輝義が。
「えっ?また俺をおいまわしてるのか」ナルシスト輝義。
「だから・・」あきれる若菜。
「お兄ちゃん、一緒にブランコ乗ろ」
祥吾は光星の手を握って引っぱり、ブランコの方向へ誘導する。
最初は困惑していた光星。
でも祥吾のその無邪気さに心が揺れる。
ありがたい。
「よ~し」
二人は手を繋いだまま、ブランコ向かってまっしぐら。
あっちでは雅代と静香。
またそっちでは輝義と若菜。
またこっちでは祥吾と光星。
その様子をオドオドしながら、足も笑いながら見てどうすることもできない朱里。
『プ~~』
その朱里の様子を見て、笑いが吹き出す清美。
その方々の光景をいつの間にか園長室に来ていた順子が、園子と一緒に眺めていた。
その日の夕日は、ゆっくりと穏やかに落ちていくような気がしていた。
「どう?落ち着いた?」
「はい」
園子と順子が園長室で言葉を交わす。
「これからも頼むわよ。筆頭保育士として」
「園長」
「どう?あの光景をどうみる?」
二人は方々の様子をマジマジと確認する。
「それぞれの形で、それぞれの境遇で私たちは生きてる。どれも一緒じゃないし、誰でもいっぱい悩みを抱えている。人から見たら、なんだそんな事?なんてことも、当の本人にしてみれば、それはそれはこの世の終わりのような悩みだったりもしてさ。結局その人がその大きさを決めるんだよね」
下を向いたまま何も発せない順子。
「今日はちょうど、それぞれが悩んだ後にそれぞれが解決できた。ちがうな。それを受け入れられた、ってことですかね。時は最高の薬。少し離れて時の流れを見れば人は変われる。かもね」
「まだここに居ても良いのでしょうか」
「それを決めるのは園長である私の仕事。もう云ったよ」
「はい」
『コンコン』園長室のドアを叩く音がする。
順子はドアに行き、扉を開く。
その先には深々と頭を下げる雅代。
「どうぞ、お入りください」
雅代は入室し園子に向かってまた頭を下げる。
「ささ、お掛けになって。高城さんも」
雅代、順子が各々席につく。
「園長」雅代が切り出す。
「私の考えが間違っていなければ、あの一件についてはもう何も云う必要はないかと思います」
雅代は大きく首を縦に振る。
園子は笑みを浮かべる。
「光星君と輝義君は明日から?」
「いえ、週末に引っ越しがありますので、月曜日からまたお願いしたいと思っています」
「そうですか」
「その際は、ぜひ高城さんにも見ていただければ」
順子はその会話を聞き安堵する。
「大変でしたね、この数日は」
「はい」
あの時の勢いは雅代には無かった。
時が経てば状況も変わる。
人も変わる。それを実感した数日間だった。




