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05

全てを聞き終わったクラインは私にこう言ってくれました。


「なんだって?リヒテル王国の連中は君をお荷物聖女のレッテルを張って王国を追放したというのか?」


私はクラインに言いました。


「そうなんです。」


クラインが私に言ってくれました。


「なんて愚かな連中なんだ。救いようのない愚か者だな。王国一のいや大陸一の愚か者共だ。君がいなければ王国がいや大陸が回らなくなるというのに。」


私はクラインに言いました。


「ちょっと大げさでは??」


クラインが私に言いました。


「そんな事はないよ、アニアは今や大陸にとって必要不可欠な人間なんだ。目の前の事しか見る事ができないとはリヒテル王国の国王はとんでもない愚か者だし、君と婚約破棄をしたバイルは人を見る目が全くないと言わざるをえない。アニアみたいな真面目で魅力的な女性が目に入らないなんてどうかしているよ!!君が魅力的ですばらしい女性だとなぜ分からないんだ。」


クラインがそう言ってくれて私は元気が出てきました。


「嘘でもそうやって励ましてもらえると嬉しいです。」


でもクラインはこう言ってくれました。


「嘘じゃなくて、すべてありのままの事実なんだよ。全く腹立たしい限りだね。アニアはこんなにも謙虚で優しいのにこんなひどい仕打ちをするなんて。」


クラインは私の為に怒ってくれました。


クラインが私に言いました。


「とにかくこの事で君は全く悪くない!!もちろんこれから起こる事も全てリヒテル王国の国王達の責任だ。君の事だからきっとその事も気にしているんだろう?」


私はクラインに言いました。


「はい私がいなくなったせいで起こってしまったようなものですから。」


クラインが私に言いました。


「アニア、それは違う。今回の事もこれから起こる事も君のせいでは決してない。悪いのはアニアの仕事ぶりを理解しようとすらしなかったバイル王太子達の責任だ。全てはあいつらの自業自得なんだよ。アニアは今まで本当によくやっていたと思う、だからもう気にしなくていいんだ。」


私はクラインに言いました。


「はい、ありがとうございます。」


打ち明けて本当に良かった。クラインだけは私の味方でい続けてくれました。


するとクラインがこう私に尋ねました。


「それでアニア??君はこれからどうしたいんだい?一応聞くけどリヒテル王国の王宮に戻る事を望んでいるのかい?」


私は首を横に振ってクラインに言いました。


「いえもうあそこには戻りたくありません。あそこには私の居場所がありませんから。強引に戻ったところできっと同じ事を繰り返すだけだと思うのです。だったらいっそ新しい新天地で過ごしたいと思うのです。」


するとクラインはこう私に提案してくれました。


「なら俺と一緒にベスタール帝国に来てくれないか?」


私はクラインに尋ねました。


「クラインと一緒に帝国にですか?」


クラインが私に言いました。


「アニアが苦しんでいるのを黙って見ていられないんだ。」


私はあまり考えずにクラインに尋ねました。


「それってまるでプロポーズですよね?」


するとクラインは真面目な顔で私に言いました。


「アニア君に本気でプロポーズしているつもりだよ。君を愛している。」


ええ??私にプロポーズ??どうしよう??


この前婚約破棄されたばかりなので、クラインの突然のプロポーズに私は困惑しました。


私はとても恥ずかしくなりました。


でもクラインに聞きたかったので勇気を振り絞って尋ねました。


「あのういつから私の事を?」


クラインが私に言いました。


「6年も前の事になるけど。俺が初めて第一貴族学院にやってきた時の事を覚えているかい?」


「はいもちろんです。私のいた2年のクラスにクラインが留学にきましたよね。」


「そして俺は留学早々にトラブルに巻き込まれてしまった。」


そうでした。クラインは留学早々に帝国では何の身分もない平民出身なのではないかと噂になってしまったんでした。クラインは言いたい人間には言わせておけばいいと言っていました。ベスタール帝国では何事にも実力が伴わなければならないと考えるのが一般的だったので、クラインはそう考えたようでした。ですがリヒテル王国ではそうではなく大事なのは家柄でどこの貴族家の血筋かが最も重視されていました。


「あの時俺は根も葉もない噂に過ぎないんだから、気にする人間もそんなにいないだろうとは考えていた。だがその考えは甘かった。実際はほとんどの生徒に無視をされてしまい、ひどいときは嫌がらせまでされたからな。あの時俺にちゃんと接してくれたのは君だけだった。」


「それで事態を重く見た学院長が帝国の大使に問い合わせをしたんでしたね。クラインが侯爵家の家柄である事が分かると、みんな手のひらを反してクラインにすり寄ってきたんでしたね。」


「その時思ったんだ、俺はこのリヒテル王国で信じる事ができるのはアニアだけだとね。きっとあの頃からアニアの事が好きになっていたんだと思う。」


「あの頃からずっと私の事を?」


「そうだよ。そして今日もアニアと再会してからずっと楽しくて心地いいんだ。僕はアニアの事が大好きなんだ。アニア、君を絶対に幸せにしてみせる!!だから君の人生を俺も一緒に歩ませてくれないか?アニア?もしこの告白を受け入れてくれるなら俺の手を取ってくれ。」


クラインはそう言い終わると右手をそっと差し出しました。


突然の告白で私はとても戸惑っていました。


私はどうなんだろう?


私は自分の心に問いかけました。


私はクラインをどう思っているのか?


その答えはもう出ていました。


クラインに再会するまで、私の心はボロボロでしたが今はホッと安心できている事に気がつきました。


そしてさっき私はクラインに聖女の地位を取り上げられる事を言いませんでした。


クラインにまで嫌われたくないと思ったから言わなかったんです。


つまり私もクラインの事が気になっていたんですね。


クラインといると本当に安心できるんです。


それが分かって私の心は決まりました。


もうリヒテル王国にはもう私の居場所なんてどこにもない。


だったら私を愛してくれると言ってくれたクラインと一緒に帝国に行こう。


私はそう思ってクラインの手を取りました。


そしてそのまま私とクラインは帝国へと向かったのでした。



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