表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/10

02

私はすぐにリヒテル王国を出なければなりませんでした。


そこでリヒテル王国とトロイラント公国の国境近くの町ビリーへとやってきました。


特に目的があったわけでもありませんでしたが、王国からの出国を急いだので王国の隣国であるトロイラント公国へとやってきました。


辺境の町ビリーで私はとりあえず宿屋に泊まって部屋に閉じこもりながら今後の事を考えていました。


「これから私はどうすれば??」


ほんの一週間前まではこんな事になるなんて夢にも思いませんでした。


それにしても聖女としてお荷物であるというリゼラの言う事をバイル様やお父様まで鵜呑みにしてしまうなんて。


今まで聖女として全力で役目を果たしてきたと思うのですが、それを誰も見てくれていなかったのですか。


私は聖女として全力で頑張ってきたというのに、ここまで理解されていなかったなんて。


お父様まで妹リゼルの言う事をそのまま信じてしまうなんて。


私はバイル様とリゼラがイチャイチャしていたのは、きっと仕方のない事情があるんだと思っていました。


自分をそう思い込ませていました。でもリゼラは私への嫌がらせの為にこんな事をしていたと知って、正直裏切られたと思いとても悲しかったです。


バイル様やお父様だってそうです。


信じていたバイル様に裏切られて、お父様には見捨てられてしまいました。


信じていた人達から一斉に裏切られてしまったと思うとただただ辛くて悲しかったです。


婚約者のバイル様をリゼラに取られて、聖女は私の心の拠り所だったのに、それも私が心から信じていた人たちによって奪われてしまった。


確かに他の聖女ならば当然のように持っている治癒の力を持っていません。


ですが私はその治癒にも勝る特殊な力を持っているのです。


それに私はこれまで聖女としてのお役目を全力で頑張ってきたつもりです。


にも関わらずいとも簡単に聖女の地位さえ奪われてしまいました。


まるで今までの聖女の仕事を否定されたようでさらに心が苦しくなりました。


私の心はもうボロボロになってしまい、宿屋にやってきてから数日は部屋の中でずっと泣いていました。


そして涙も枯れてしまって、ようやく次の事を考えられるようになりました。


聖女だった事を生かして何かできないかしら。まず私はそう考えました。


私は確かに聖女だったけど、治癒の力を持っていない私に何ができるというの??


なら別の貴族家に嫁ぐべきかしら?


私はすでに23になっている。


貴族家同士の婚約は歳の若いうちに決まる事がほとんどだし、そもそも伯爵家から追い出された私はすでに貴族令嬢ですらない。


23歳の貴族令嬢でもない女子の貰い手なんてほとんどないだろう。


バイル様が嫌がってたのはまさにそこだったし。


そんな事を考えていると更に悲しくなってきたのでした。


私はこれからどうするのか?


色々考えては落ち込んだり悲しんだりするばかりでいっこうに答えは出ませんでした。


そして宿屋に泊まり始めて10日目を迎えていました。


さすがに少し気分転換をしたいと思って宿屋の外を散歩しようと部屋の外に出ました。


すると宿屋の外に出ようとした所で宿屋の女主人に声を掛けられました。


「お客さん?悪いんだけど、夕食が遅くなるかもしれないんだよ?」


私は宿屋の主人に尋ねました。


「何かあったんですか?」


宿屋の主人が私に言いました。


「さっきから釜の調子が悪くてね。すまないがちょっと待ってくれるかい。」


私が女主人に尋ねました。


「他のお客さん達はこの事を知ってるんですか?」


「いやまだ知らせてないけど?」


「でしたら私がみなさんに知らせてきましょうか?」


「そうかいそれは助かるよ、ありがとね。今日泊まってるのは205のお客さんだけだからお願いしていいかね?」


「はい。」


私は女主人にそう言うととすぐに205の部屋へと向かいました。


私は205の部屋の扉の前までやってきて扉をノックしながら言いました。


「すいません、少し宜しいでしょうか?」


すると部屋の中から男の人の声が聞こえてきました。


「はい?なんでしょうか?」


そして扉が開いて部屋の中から男性が出てきたのでした。


美しい銀の瞳とアッシュブロンドの綺麗な髪できれいな顔立ちをした男性でした。


出てきた人物は私の良く知る人でした。


私はその人に言いました。


「あれっ??クライン様じゃないですか?」


その人が私に言いました。


「アニア??なんで君がここに?」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ