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01

私はアニア・パルシスという名前です。


パルシス伯爵家の第一令嬢で23になります。


私は婚約者であるバイル様に突然王宮の大広間に呼び出されてとんでもない光景を目の当たりにしていました。


人払いがされていた大広間でバイル様とお父様ととある女子が楽しそうに会話をしていました。


お父様がバイル様に言いました。


「バイル君、リゼラの事をよろしく頼んだよ。」


バイル様は金色の髪と青い瞳を持った青年で私の婚約者でした。


バイル様はリヒテル王国の王太子で今年で18になられます。


バイル様がお父様に言いました。


「ええお任せください。パルシス伯爵様。リゼラは本当にかわいらしくて素晴らしい。」


すると鮮やかな青いロングヘアーの少女がお父様に言いました。


「お父様、これからバイル様と一緒にバラ園を見に行って来ますわ。」


お父様がその少女に言いました。


「うむ、リゼラ、くれぐれもバイル君と仲良くするのだぞ。」


「はい、もちろんでございます。お父様。」


その少女はそうお父様に返しました。


彼女は私の妹リゼラで鮮やかな青い髪や透き通っている白い肌そしてサファイアの瞳を持っていて、すらりとした肢体は華奢でとてもかわいらしい姿でした。


リゼラは今年で16になり、私と同じパルシス伯爵家の令嬢で第二令嬢になります。


バイル様がリゼラに言いました。


「そうだ、リゼラ新しいサファイヤが欲しいと言っていただろう?バラ園を見に行った後で、一緒にサファイアを買いに行こう。」


リゼラは嬉しそうにバイル様に言いました。


「まあ嬉しい。あれずっと欲しかったんです。バイル様大好きです。」


リゼラはそう言うと、バイル様に抱きついたのでした。


私はそれを見て息を飲みました。


お父様がリゼラに言いました。


「これこれはしたないぞ、リゼラ??」


ですがバイル様はむしろ嬉しそうな顔でお父様にこう言いました。


「パルシス伯爵様、別に構いません、こういうリゼラも本当にかわいらしいですから。」


私は大広間に入って以降、ずっと何が起こっているのか分からずに唖然としていました。


なぜか私の婚約者であるバイル様と妹のリゼラがイチャイチャしていたのです。


私はその理由をバイル様とお父様に尋ねました。


「バイル様??なぜ妹のリゼルと一緒にいるのですか?お父様これはどういう事ですか?」


ですがバイル様は私の質問には答えてくれませんでした。


お父様も私を無視してバイル様に言いました。


「バイル君、これからもリゼラとの愛を育んでいってくれると嬉しいのだが。」


バイル様がお父様に言いました。


「もちろんです。こんなにもかわいらしいリゼルと真実の愛を育んでいきます。」


私は再びバイル様とお父様に尋ねました。


「あのう、バイル様??お父様??これはどういう事ですか?なぜバイル様とリゼラが一緒にいるのですか?」


ですがまたしてもバイル様もお父様も私の質問には答えてはくれませんでした。


お父様がバイル様に言いました。


「バイル君、この前もリゼラにエメラルドを送ってくれたそうだね。リゼラも喜んでいたよ。」


バイル様がお父様に言いました。


「そうですか、リゼラが喜んでくれて良かった。」


私は再び婚約者のバイル様とお父様に大きな声で尋ねました。


「あのう?バイル様!!お父様!!」


するとお父様とバイル様は私の方を振り向きました。


そして私の顔を見るなりバイル様もお父様も不機嫌そうな顔になったのでした。


さらにバイル様が私に怒鳴りつけたのでした。


「うるさいお荷物女(にもつおんな)!!俺の楽しいリゼラとのひと時を邪魔するんじゃない。」


するとリゼラがバイル様に言いました。


「バイル様、お姉様をお待たせするのも悪いと思います。」


するとバイル様は急に笑顔になってリゼラに言ったのでした。


「ああ、リゼラ君は本当にやさしくていい子だ。気が利いて俺の事をしっかり分かってくれて。このお荷物女(にもつおんな)とはえらい違いだな全く。」


バイル様はそう言うと私をまた睨みつけてきました。


なぜこんなにも私への態度が急変してしまったのか全く分かりませんでした。


そしてバイル様と妹のリゼラがなぜイチャイチャしているのかそればかり気になっていました。


するとバイル様が私に言いました。


「いいかアニア?お前との婚約を破棄する事に決めたんだ。」


お父様が私に言いました。


「そうだ、お前はバイル君の相手にふさわしくないんだ。それで婚約破棄という事になった。」


私がバイル様に言いました。


「こ??婚約破棄??なぜですか?」


私は突然婚約破棄を突き付けられてさらに困惑しました。


バイル様が私に言いました。


「そもそもアニア!!お前が聖女だから仕方なく婚約していただけだ。そうでなけりゃお前みたいな年増(としま)なお荷物女と婚約なんざするわけないだろうが。年増女のお前なんざ顔を見るだけで嫌だったさ。何度テメエの顔にツバを吐きかけてやろうと思った事か。」


そんな??私の顔を見るだけで嫌だった?聖女だから仕方なく婚約していただけ??私は初めてバイル様からひどい言葉を投げつけられました。


バイル様が私に言いました。


「俺の心はアニアお前と話すたびに大きなストレスが溜まっていったんだ。お前はただ聖女だというだけで他には何の取り柄もない年増(としま)なお荷物女(にもつおんな)だ。」


私はバイル様に尋ねました。


「つまりバイル様は私が聖女だから渋々婚約したと??そういう事ですか?」


バイル様は怒りに満ちた表情で私に言いました。


「そうだ!!聖女というのは奇跡を起こせる存在だから大事に扱わなければならないんだよ。全く!!はあー!!せめてお前がもう少し若ければ救いがあったんだが、23の年増女だからただただ絶望しかなかった。」


バイル様は私にひどい言葉を浴びせ続けました。


私はわずかな希望を持ってお父様に助けを求めました。


「お父様?お父様もバイル様に何か言ってください。」


ですがお父様はこう私に言いました。


「アニア。本当に不出来な娘だよお前は。俺はなバイル君の婚約破棄に賛成しているんだ。アニアお前の味方などせんぞ。自分が婚約破棄されればパルシス伯爵家とリヒテル王家の関係が損なわれて俺が慌ててバイル君との仲を取り持つとでも思ったか?残念だがそんな事はない。なにせバイル君の新しい婚約者は我が息女であるリゼラなのだからな。引き続きリヒテル王家との深いつながりは保たれるんだよ。」


やはりお父様までバイル様の肩を持っていました。


お父様は遠慮なしで私に言いました。


「そんな事よりも一つ確認しておかなければならない事がある。アニアお前が聖女としても満足に役目を果たしていないという噂を聞いてな。俺はその話を聞いて耳を疑ったぞ。話によればアニア、お前が治癒の力を持っていないお荷物聖女だとな。」


「えっ??」


バイル様も私に問い詰めてきます。


「アニアお前は治癒の力を全く持っていないお荷物(にもつ)な聖女なんだろう??どうなんだ??」


私は二人に正直に言いました。


この世界では女神イリエス様からの恩恵を授かる事ができる人の事を聖女と呼ばれて崇拝されていました。


この女神イリエス様からの恩恵で一番ポピュラーなのが人の傷を癒す事ができる治癒の力でした。


聖女ならばこの治癒の力を持っているのは当たり前でした。


私がバイル様とお父様に言いました。


「確かに治癒の力は持っておりません。そして私がみなさんからお荷物聖女と呼ばれている事は存じ上げています。」


お父様がため息をつきながら私に言いました。


「はあー、情報通りやはりお前はお荷物聖女だったようだな。この出来損ないめ。」


バイル様が私に言いました。


「アニア!!お前は治癒の力を持っていないにも関わらず聖女としてふんずりかえっていたわけだ。とんでもないお荷物聖女じゃないか。」


お父様が私を睨みながら言いました。


「アニア!!お前はどこまで俺の顔に泥を塗るつもりなのだ!!バイル君に嫌われた挙句に、聖女としても何の役にも立っていないなどとパルシス伯爵家の恥以外の何物でもない!!どこまでも愚かな娘だ!!アニア!!お前みたいな娘がいるというだけで我が伯爵家の恥だ。」


私は慌ててバイル様とお父様に言いました。


「お待ちください、バイル様??お父様??これにはちゃんと理由があるのです。」


ですがお父様は私にこう言いました。


「そんなもの聞きたくもない。この役立たずめが!!治癒の力も持っておらんくせによくも聖女の地位につかせてくれなどと言ったものだ!!」


バイル様は私を笑いながら言いました。


「やはりアニアお前との婚約破棄して間違いなかったな。お前がお荷物聖女だと分かった以上、俺はお前みたいな年増女と婚約なんて絶対にしない。俺はかわいらしいリゼラと婚約するんだ。」


するとリゼラがバイル様とお父様に言いました。


「お父様?バイル様??お姉様のお話を聞いてさしあげてはどうですか?」


バイル様はリゼラの方を振り向くとこう言いました。


「優しいなリゼラは、本当にいい子だ。こんな役立たずでお荷物な女とはえらい違いだ。でもねリゼラこんな女に気遣いは無用なんだよ。とんでもない役立たずなんだから。」


お父様がリゼラに言いました。


「うむ、リゼラのような優秀な子が我が娘で本当に良かった。こんな出来損ないのアニアだけだったら目も当てられなかったわ。」


お父様がバイル様に言いました。


「バイル君、本当にすまなかった。こんな救いようのない無能な娘と婚約させてしまってなんと詫びればいいか。」


バイル様がお父様に言いました。


「パルシス伯爵様?もう気にしておりません。俺はリゼラと真実の愛を見つける事ができましたから。」


お父様がバイル様に言いました。


「うむ、そう言ってくれると助かる。」


バイル様がリゼラに言いました。


「なあリゼラ??これから二人で楽しく過ごしていこう。」


リゼラが頷いて答えます。


「はい、バイル様。」


バイル様が私に言いました。


「アニア、お前は聖女の地位にはふさわしくない。なにせ治癒の奇跡を起こせないんだからな。まさにお荷物聖女と呼ぶにふさわしい。お前は今この場で聖女の地位からはく奪だ。このリヒテル王国からも追放する。分かったな!!」


お父様が私に言いました。


「アニア!!お前をパルシス伯爵家から追放する!!バイル様に嫌われたうえに、聖女のお役目もろくに果たせん愚かな娘を当家に置いておく事などできん。お前のような親不孝者の顔なんぞ見たくもないわ。明日までに家を出ていけ!!分かったな!!」


私は必死に二人に言いました。


「待ってください!!ちゃんと私の話を聞いてください!!」


するとバイル様が私に言いました。


「なるほど、国王である父上が味方につくかもと期待しているんだな?それは無理だぞ。ちゃんとリゼラと婚約する事もお前から聖女の地位を取り上げ、追放する事も父上から許可をもらっているんだよ。父上も激怒しておられたぞ。よくも治癒の力も持っておらんくせに、聖女などと言って余を騙したなと言っておられた。」


私は二人にお願いしました。


「お願いします。聖女は私の心の拠り所なんです。取り上げないでください。」


バイル様が私に言いました。


「はん、お荷物のくせに聖女の地位に執着するとは見苦しい限りだな。いいかお前みたいなお荷物聖女がいなくなればみんなが助かるんだよ、お前のようなお荷物がこのリヒテル王国の足を引っ張っているんだよ!!」


お父様が私に大声で言います。


「アニア!!つべこべ言わずにパルシス伯爵家から出ていく準備を始めろ!!分かったな。」


バイル様が思い出したように私に言いました。


「そうだ、聖女として与えていたあの屋敷も没収だからな。あの屋敷には二度と近づくな。」


私はバイル様に言いました。


「待ってください、あそこには。」


バイル様が私に言いました。


「やかましい、お前の屋敷なんてもう王国のどこにもないんだよ!!ちゃんと理解しろ!!とにかくあの屋敷には2度と近づくな!!分かったな。」


お父様が私に言いました。


「見苦しい事をしておらんで、さっさと家に戻って出ていく支度を始めろ!!」


バイル様とお父様はそう言うと大広間から出ていきました。


本当にひどい仕打ちを受けて私は茫然としました。


するとリゼラが私に話しかけてきました。


「お姉様??大変な事になってしまいましたね。」


私はリゼラに言いました。


「リゼラ!!お願いです力を貸してください。」


リゼラは不思議そうな顔で私に尋ねました。


「力を貸す??」


私はリゼラに言いました。


「リゼラ??お父様とバイル様を説得してもらえませんか?」


リゼラは再び不思議そうな顔で言いました。


「説得?なぜですか?」


私はリゼラに言いました。


「なぜって、私の聖女としての地位を奪われて、追放されてしまうんですよ。リゼラあなたなら大変な事だって分かるでしょう。」


リゼラは笑顔で私に言いました。


「はい、分かります。でもお姉様をお手伝いする事はできません。」


私はリゼラに尋ねました。


「リゼラ??どうしてです??」


するとリゼラはとんでもない事を私に言ったのでした。


「分かりませんかお姉様??これはすべて私が望んだ事だからですよ。」


私はリゼラに聞き返しました。


「望んだ事?」


リゼラが私に言いました。


「はい、聖女の地位からお姉様が追放される日を心待ちにしておりました。なにせお姉様がお荷物聖女だっていう噂を流したのは他ならぬ私なんですから。」


私は驚いてリゼラに尋ねました。


「なっ??リゼラがバイル様やお父様に告げ口したんですか?」


リゼラは悪びれる様子もなく満面の笑みで私に言いました。


「はーい、そうでーす。」


私はリゼラに尋ねました。


「なんでこんな事をしたんです?もしかしてリゼラも聖女の地位が欲しかったんですか??」


リゼラが私に言いました。


「私も聖女見習いですから聖女の地位はもちろん欲しいですよ。でももっと大事な事があります。お姉様を不幸のどん底に落としたかったんです。」


私はリゼラに尋ねました。


「私を不幸のどん底に落とす?」


リゼラが満面の笑みで私に言いました。


「実は私お姉様が昔から大嫌いだったんです。昔からいい人ぶってお姉ちゃんぶるお姉様が大嫌いでした。だからお姉様の苦しむ姿が見たくてみんなにお姉様がお荷物聖女だって言いふらしました。お姉様が治癒の力が使えない事もそれとなくバイルやお父様に伝えたのも私ですよ。」


「まさかバイル様と婚約したのも??」


「ええお姉様が幸せになるなんて我慢できませんでしたから、バイルに近づきました。バイルの奴イチコロでしたよ。私がちょっと甘えたらバイルの奴私にメロメロになりましたからね。」


「それじゃああなたはバイルの事を愛していないの?」


「別に愛してはいませんよ。バイルの事なんて何とも思ってません。お姉様を苦しませる事が目的でしたから。まあ今より贅沢できるようになりたいってのもありましたけどね。」


「信じられない??お願い冗談だと言ってリゼラ?」


「全部本当ですお姉様。結構大変だったんですよ。それとなくお姉様がお荷物聖女だという噂を広めるのは。みんなお姉様にも治癒の力があると思い込んでましたから。」


私はとんでもない事を妹リゼラから聞かされ続けました。


「あっそうそうお姉様!!出ていく支度はしなくてもいいですよ。お姉様の私物は全部私が頂いておきますから。安心してくださいねお姉様。あとお荷物聖女のお姉様が果たさなかった聖女としての役目は私が代わりに引き継ぎますからお姉様は安心して追い出されてください。」


「私の私物まで取り上げる気ですか?」


「ええ、お姉様の持っているアクセサリーやお洋服が前から欲しかったので、ついでに頂いておきます。」


「あれは私の物ですよ。」


「お姉様?素直にお姉様のアクセサリーやお洋服を私に渡してください。さもないとお姉様が出ていくどさくさに紛れて伯爵家の物を盗もうとしているとバイルやお父様に言いつけますよ。それでもいいんですか?」


私はリゼラが怖くなりリゼラの言う通りにするしかありませんでした。


リゼラは最後にこう私に言いました。


「それじゃあお姉様??このまま王国から出て行ってください。それとここでお姉様の見送りをさせてくださいね。お姉様が哀れに追い出される姿をしっかり見ておきたいですから。」


そして私はリゼラからわずかばかりの所持金を渡されて、私を追い落としたリゼラに笑顔で見送られて大広間を後にしなくてはなりませんでした。


持ち出す事ができたのは懐に入れていた礼拝用のアミュレットと青いクリスタルだけでした。



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