6話 出発
「……この街が滅ぶって、どういうこと?」
ルカの視線が痛い、蛇に睨まれた蛙とはこのことだ。
ついこぼれた爆弾発言をよりにもよって聞かれてしまうとは……。
何か言わなければとは思うがうまく言葉が出てこない。
「ゆ、夢で見たんだ!」
「……夢?」
なんとか絞り出した言い訳に、ルカはいぶかしげに呟く。
「夢で女神様が『闇の軍勢が迫っています!このままだとこの街は滅んじゃうよ!』って!」
「シエル。」
「……はい。」
信じてもらえないか、こんなこと言ったら余計にあやしまれるだけだ。
「信じるわ。」
そうだよな、信じてもらえるわけな……え?
「あなたには驚くべき力がある、それは昨日の夜私自身が見ているわ。もしかしたら、本当に女神フレア様の加護を受けているのかもしれない。」
ルカは濁りなく思った言葉を紡いでいる。
「もし本当にあなたが女神様の信託を夢で受けていたとしたら、その危機がないとは言い切れないでしょ。」
「ありがとう、信じてくれて!」
「ただ、夢で見たというだけではどうしようもないと思うの、何かあてはあるの?」
「もちろん!少し調べたいことがあるんだ、協力してほしい!」
この街がゴブリン族の侵攻を食い止められなかった原因はいくつかある。
それが解消できればこの街を救うための一助になるかもしれない、そのあてはある程度予想がついていた。
「それじゃ、今日はシエルに付き合うわ。どのみち今日はギルドで依頼を受ける気分じゃなかったし。」
そう話すルカは心なしか弱弱しく見えた。
確かに昨日あんなことがあったのに今ギルドに行くのはさすがに危ないかもしれない。
その後、朝食と身支度をすませギルド宿舎を出発した。
「ルカあああああああああ!」
しかし宿舎を出ると、俺たちは大きな声で呼び止められた。
「よかったあああ!心配したんだよぉ!」
「ミリア、落ち着いて……私は大丈夫。」
ミリアと呼ばれた少女はルカに思い切りしがみついている、この女性どこかで見たような。
茶髪のショートボブでかなり小柄な女の子だ、身長に反して自重しない胸がたわわに揺れている。
「この子はミリア、シエルははじめましてかな。冒険者ギルドの受付をしているの。」
「ああああああ、あの無能力で派手に吹き飛んでた子!!」
無能力で派手に吹き飛んでて悪かったな、ただ見覚えがあったのはあの日ギルドにいた受付の子だったからか。
話を聞くと昨夜俺がギルドから追い出されたあと、あとを追ったルカが気になって様子を見にギルドを出たが俺たちは立ち去ったあとだったらしい。
それでルカを気にかけていたんだな。
「男嫌いのルカが……なぜ男と一緒に宿舎から……。」
ミリアは何やら独り言を言っているが、ここでギルドの人間に出会えたのは僥倖だ。
冒険者ギルドに出向かずに調べものを依頼できるのであれば助かる。
「ルカ、ミリアさんにギルドのクエストについて少し調べてもらうことはできるかな?」
「むむ、君ぃ、さすがにギルド関係者以外に内情を漏らすようなことはできないよ~。」
ミリアは人差し指を左右に振り、ちっちっちっとジェスチャーをする。
さすがに簡単にはいかないか、条件をもう少し変えて交渉する必要はありそうだな。
「ミリア、事情はあとで詳しく説明するよ。無理を言ってるのは承知の上だけど協力してほしいの。」
「ルカが言うなら仕方ない、話を聞くよ!」
こら、ダメだろ。
とツッコミを入れそうになったが、話を聞いてくれるならOKだ。
「いくつか条件と依頼主が合致するようなクエスト依頼がないか調べて欲しいんだ。」
「ふーん、それくらいなら公開されている情報だし問題ないかな~。それでは条件を聞こうじゃないか!」
俺は調べてほしい内容をミリアに伝え、ルカと共にその場を後にした。
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