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今
昔、小説が読めなかった。
理解も納得も共感も感動も、何も思えなかった。
ほんの数ページを読んで、あとは内容すら頭に入ってこなかった。
ファンタジー小説の主人公は困難に立ち向かう。
日常を生きる主人公は何かに悩まされて生きている。
それで、いつも、思ってしまう。
死ねばいいのに。
死は救いで、全ての問題に対して有効で、無条件に取れる手段だから。
問題や困難の解決にはならなくても、死んだ後ではどうでもいい話。
最短で死に結びつけてしまうのが、どうしても頭から抜けなかった。
死んでもいいから生きている僕の感性は、物語の中にまで入ってきていた。
悩み苦しみ続ける気が知れなくて、だから、本を閉じた。
もう長い間、文字という文字を読んだ記憶がない。
死ねばいいのに、そう思っているのは今も変わらない。
死ねば救われると、今でも思っている。
それでも、ある日。
生きなければならないとしたら。
苦しくても悩んでいても、理屈も効率も度外視して。
死んではいけない理由がなくても、生きなければならないとしたら。
何がなんでも、生きるなら。
今なら、小説が読める気がした。




