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死んでもいいから生きている。  作者: 猟虎戀太郎
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キス

「お……お邪魔します!」


 出来の悪いロボットみたいにガチガチな動きの柳川さんを玄関に招き入れる。

 リビングの方からパタパタと足音が聞こえる。珠夜さんが顔を出した。


「いらっしゃい。あら」


 柳川さんを見て、珠夜さんは意外そうに目を開いて、少し驚いているようだった。


「こんにちは。お邪魔します……!」


「はい、こんにちは。ゆっくりしていってね」


 それも一瞬のことで、嫋やかに迎え入れてくれる。


「とりあえず、部屋行こっか」


 いざ部屋に入れると、柳川さんは困り顔を浮かべた。


「なんていうか……先輩って、ミニマリストなんですね」


「殺風景って素直に言っていいよ」


 ほとんど空っぽの勉強机にベッド、服入れの棚くらいしかない部屋だ、飾り気に欠ける部屋だという自覚はある。


「そう考えると、家でもあの教室でも変わらないね」


「お邪魔させてもらってるだけありがたいです」


「そういってくれると助かるよ」


 しばらくは珠夜さんが持ってきてくれたお菓子と雑談で時間を潰した。


「珠夜さんは先輩のお母さん、じゃないんですよね」


「うん、珠夜さんはお母さんの妹。僕の叔母さん」


「ご両親は共働きとか?」


 ちまちまとオレンジを飲みながら、柳川さんは今までの雑談に流れで聞いてくる。


「父親はずっと前に離婚してて、母親はもう死んでる」


「ごめんなさい。嫌なこと聞いて」


 しゅんと身を縮こめる柳川さんに僕は呆れ笑いを浮かべるだけにとどめた。

 今は二人、隣り合ってベッドに座っている。すると、柳川さんが身体を擦り寄せるようにずらしてくる。腕が触れて、肩に柳川さんの頭が凭れる。


「もしかして、慰めようとしてくれてる?」


「わかってるなら口にしないでください」


 お言葉に甘えて、柳川さんを抱き込んで一緒にベッドに倒れる。暴れるかもと思ったけれど、むしろその逆、腕の中で玄関のとき以上にガチガチに固まっていた。

 しばらく抱きしめたままでいると、身体の力も抜けていった。


 温かくて、柔らかい。髪からふうわりと甘い匂いがする。


 下を向くと見上げる柳川さんと目が合う。

 顔を寄せると、頬がいっそう赤く染まって目が潤んでいるのがわかった。


 逸らすことなく見つめ合い続けて、意を決したように柳川さんは目を閉じた。


 その日、初めてキスをした。

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