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その六

カイの先導で、俺とアイシアは無事に研究所へと入ることができた。

研究所の内部を見るのはずいぶん久しぶりだが、相も変わらず混沌としている。うん、別に研究に使うとおぼしき道具とかが至るところに放置されてるのは良いんだけど、なんで裸でうろついてる連中が結構いんの?

あ、汚れるからなの。そっかー、合理的だねー。


「それで、二人が来たのって会館のあれですよね」


伝わってるか。そりゃそうだな。なんせお隣さんだし。


「それよ」

「でしたら、お嬢が、シノア・ド・ディグディグ様がお待ちです」


珍しくカイが、自分の主人のことをフルネームで呼んだなと思っていたら、アイシアは目を細めて、ため息を吐いた。


「真面目ね……」


その言葉の真意は分からないが、彼女の表情が全てを表していた。例えるなら、本気で取り組めばすぐに終えられるけど、その本気で取り組むこと自体がめんどくさい仕事に取りかからざるを得ない時みたいな感じ。要するに、だっる!と顔が物語っていた。

え、今回の件もっと面倒なことになりそうなの?


「そこの階段を下りてもらって、すぐの部屋にお嬢がいますので。僕はこれから警備へ」


研究所所属の魔狩りは、妙に早口でその場を立ち去ろうとしたのだが、武の貴族によってガシッと腕を固められた。ついでに俺は、目で逃げるんじゃねえぞと、威嚇された。

そんなに、逃げた方が良いことが待ってるの?


「カイ、あなたどうせ最後まで付き合うように命じられてるんでしょ?」

「…………はい」

「じゃあ、諦めなさい」


カイは、しおしおと縮んでいった。もちろん、本当に小さくなったわけではないんだけども。


「ケイトは、最期まで、私と、一緒だから、ね?」

「こわっ」


なんか釘を刺された。どんだけ俺を逃がしたくねえんだよ。


研究所の地下は、地上階のカオスさと比較して、音が少ない。ひんやりとした空気が頬を撫でる。


「お嬢、お連れしました……」

「どうぞ、入ってきてください」


シノアの声の後、カイは扉を開いて俺たちが中に入るのを促した。そのまま自分は中に入らずに扉を閉めようとして、アイシアに捕獲されていた。


「ケイトさん、お久しぶりです」


シノアは深々とお辞儀をしてきた。


「あ、どもども、ご丁寧に」


慌ててこちらも深々とお辞儀を返す。

アイシアは、そんな俺たちを横目に見つつ、


「シノア、取りあえず二人捕まえてきたわよ」

「ああ、流石アイシアさん、話が早い」

「それじゃあ、茶番は後で良いかしら」

「そうですね」


話が早過ぎると言いたい。俺、何も理解できてねえんだけど。カイはようやく諦めたようで、死んだ目をしている。

本当に俺だけが、会話に置いていかれている。


「じゃあ、ケイト、今後あなたは暗殺者とかに狙われるかもだからごめんね?」

「は?」


まじで、何でだよ。説明しろよ。

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