その五
研究所と会館は、仲良しなご近所さんだ。
研究所といっても、ここサハイテにある研究所は実は支部ということになるのだが、魔獣関連に関しては本部よりも優れているというのがもっぱらな噂だ。
最も、王都にいるとなにをやらかすか怪しいけど優秀すぎでクビにできないみたいな問題児達が集められている、なんて話もある。こっちは、多分真実だと思う。
んで、そんな研究所サハイテ支部と会館が隣接しているのは、当然ながら意図的なものだ。
会館には当然魔狩りが多く在籍しているので、捕獲されたり討伐された魔獣が結構な数集められる。
んで、研究所としては、新鮮な魔獣の死体とか珍しい魔獣がいればいち早く確保したい。
一方で会館としては、珍しい個体すなわちすぐさま商品としては卸難い個体を引き取ってもらって鑑定までして貰える研究所の存在は有難い。
要するに利害が一致して良好なお付き合いを続けているのだ。あと、食堂は会館の方がクオリティが高いので、研究所の連中は意地でも王都に帰りたくないらしい。ご飯、大事。
まあ、そんな距離にあるので、俺とアイシアは当然ながらすぐさま研究所へと到着した。
開放的過ぎて時折野生の動物とかチンピラが紛れ込む会館と異なり、しっかりと警備のための人員が配置されているのが研究所の特徴だ。サハイテ支部の場合、外部を警戒するためというより問題児どもがやらかしてやべえものを産み出した時に対処するため、って言う方が意味合いとしては強いらしいけど。
「ここに来るのは、ぼくのかんがえたさいきょうの愛玩魔獣事件以来ね」
「通称で呼ぶんじゃねえよ」
この女が、竜卿として関わったやつなので、かなりにやべえ事件で、もっと真面目な事件名がついている。最も、皆こっちの通称で呼ぶけど。
「そういえば、研究所って訪問前に連絡しないといけないんじゃなかったっけ」
「知ってる?武の貴族には昔から、こう言えば連絡してましたってことになる言い回しがあるのよ」
そんな便利な言葉があるんですか?
全く信じないぞ。
「頼もーう!」
多分、違うやつ。なんか分からんけど、これ互いのプライドをかけた暴力に結び付きそうな掛け声ですね。
案の定、警備の方々がわらわらと俺たちを取り囲んだ。
無実です。
「ありゃ、ケイトとアイシア様か。直接きたんだ」
武器を構えた面々の中から俺達に声をかけてきたのは、でっかい優男だった。
おお、知り合いだ。不審者じゃないってことが、これで無事に証明できる。