表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/146

羽集め 顛末

今回の学び。

過剰な羽集めは、心を破壊する。


「つーことで、諸悪の根元のギルマスに嫌がらせしてきた」

「あなた、退院してきたその足でなにやってるの?」

「こういうのは速さが大事だからな」


正当な理由に基づく嫌がらせってやつは、相手が油断してるところで仕掛けてなんぼだからな。

一緒に退院したモルトも誘ったのだが、断られた。あいつ、心広いな。


例のごとく、俺の家に上がり込んでいるアイシアは、ベッドに腰掛けてぽんぽんと彼女自身の太腿を叩いた。俺は素直に、膝枕される。


「因みに、何をやったの?」

「どこぞの知の貴族さんを直談判の上で呼び寄せた」

「無駄すぎる行動力ね……。あと、聞くまでもないけどそれって女当主さん?」

「そうそう。ギルマスと昔色々あったらしい、あの」


名前を出すまでもなくユリアなのだが。


「それ、嫌がらせじゃなくて、ご褒美っていうんじゃないかしら」

「甘いぞアイシア。ユリアが来たら、確実にギルマスの仕事は少なくとも三日止まる」


あの二人、トラブル体質だから確実になんか起きる。

何が楽しいのか、アイシアに俺の髪の毛はわしゃわしゃされた。


「それが?」

「『わーい、リフレッシュできたぞ!→超山積みの書類の山。』このコンボは、普通よりも心の深いところにぶっ刺さるぞ」

「そもそも、リフレッシュすらできてないから、単に仕事増えてるだけでしょそれ」


そうとも言う。


ギルマスのことだから、直ぐに報復してくるかなと少し警戒していたのだが、そんなことはなかった。ユリアとのすっげえしょうもない争いに忙しいのかもしれない。


「ねえ」

「あん?」

「足しびれたから、交代」


無理やり上半身を起こされて、向きを変えられる。強制的に膝枕をすることになった。

心地よい重み。

ふわふわと頭を撫でると、形の良い唇が少しだけ綻ぶ。

平和だ。


しばらくそんなことをしていたら、ドアを叩く音がする。


「アイシア、出てくんない?」

「いやよ、家主はあなたでしょ」

「それはそうなんだけど、お前のおかげで動けなくなったんだよ」


これは豆知識なのだが、人間の太股は人の頭を長時間乗せられるように設計されていない。端的に言えば足がしびれた。


「しょうがないわね……」

「ぎゃっ!」


おいこら、起き上がるだけなんだから、俺の太腿を指でつつく必要なかっただろうが!


戻ってきたアイシアは、でっかい物を抱えていた。


「あなた宛よ」

「そりゃそうだろ」


ここ、俺の家だし。一緒に届けられたという手紙は後回しにして、なぞのでっかい物を縛っている紐をほどく。


「あー」

「布団?」

「あ、やっぱりこれ羽集め……………はねねねねねねねねね」

「落ち着きなさい」


危なかった。背中を叩いてくれなかったら、またあの思い出が甦るところだった。それはそれとして、パーで本気で殴る必要あったの、アイシアさん。


「例の依頼人からだな。ヨルネズクの布団だとよ」

「へー、律儀…………ちょっと待って、依頼終えてから数日しかたってないわよ?」

「やる気がすごいんだろ」


布団がそんな直ぐに出来上がるもなのかは知らんが、頑張ったんだろ。

せっかく貰ったんだし、試しに寝てみることにした。


「……………………」

「どういう顔よ、それ」

「なんだろう。石みたいなもんが詰められてる布を身体の上に乗せてる感じ」

「ええ…………?」


試せば分かる。

俺は起き上がって、ベッドから降りてアイシアを布団に押し込んだ。


「………………………」

「感想は?」

「うすーい板がいっぱいに入ってるんだけど密度が低いから熱とか閉じ込めることなく放出していっちゃうし、寝心地も微妙」


俺よりも辛辣だった。さすが、最高級寝具ユーザーだ。


「ふわふわもこもこが一番だな」

「そうね、ふわふわもこもこしか勝たないわね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ