表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/146

その十六

文明喰らいを退けることには成功したのだが、残念ながら他の魔獣もそれに付き従うなんて美味しい話はない。いや、本当に一緒に持ち帰ってくれてもいいのよ文明なんたら君?

ということで、俺達はさっさとこの場から逃げ出すべきなのだが。

合流したアイシアは、俺の姿を認めるなりぷっつりと糸が切れたように、崩れ落ちた。

突然大きな隙を見せた彼女に襲いかかる魔獣から、すんでのところでその身体を俺の元に引き寄せる。

そして、


「はあっ!」

『GYAAA!?』


技もなにもあったもんじゃない、ただただ力を込めただけの枝の振り下ろしで、魔獣を怯ませた。小型で助かった。先ほど、環境種を相手にしたときの不思議な感覚の代償か、俺が作れた枝はとてつもなく頼りなかったので、それだけでへし折れてしまう。こういうときの便利アイテム煙石を投げた。

僅かに産み出された時間の間に、意識ははっきりしているらしい腕の中の女に俺は問いかける。


「アイシア、お前どんだけ動ける?」

「…………歩くのが限界、ね」

「やっぱ、そうか」


歩けるだけ、マシだが。

前はそのままぶっ倒れて、三日は起き上がれなかったし。

今回は、俺がアイシアのタイムリミットより早くに、事を終えられたのが功を奏しているのだろう。


「おんぶと抱っこどっちが良い?」

「おんぶしかないでしょ、両手を塞ぐわけにはいかないわよ」


まともな判断ができる程度には、意識がしっかりしているらしい。

背中に女の重みを感じる。そう言う意味じゃないからアイシアさん、首をキュッてするのやめてくれ。

俺もアイシアも武器は捨てていく。今は身軽なことが一番必要だからだ。あの弓の値段は考えないことにする。


「お前の爆弾、残ってるだけ全部ばらまいてくれ」

「腰のポーチに、入ってる分だけよ」

「じゃあ、合図するからポーチごと投げてくれ」


片手で俺の背中にしがみつきながらでも、それくらいは今のこいつでもできるはずだ。

数は減りつつあるとはいえ、それでも十数匹は優に越える魔獣に囲まれている。壁みたいになってるの、本当にやめて欲しい。

取りあえず、こっから抜け出さなければならない。


「投げろ!」


魔獣による包囲網に、投げ込まれたそれは、壁の至るところから赤い液体を垂れさせた。

壁に綻びができる。今しかない。


「それじゃあ、舌噛むなよ」

「魔獣に襲われて死ぬんじゃなくて、転落死かしら」

「なら、ここで死ぬか?」

「冗談」


そりゃそうだ。

俺たちは、この森でもっとも高い木から飛び降りた──。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ