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その十五

一体どうすれば良いのだろうか。

何度目になるのか分からない自問を繰り返す。

俺が環境種にダメージを与えられるのは、白の矢ひとつだけだ。

だが、姿が見えないモノに照準を合わせられるはずはない。


「くそっ」


太陽が昇りつつあることで、迫り来るタイムリミットがはっきりと分かる。

一か八か、当てずっぽうで狙ってみるか?


「それはだめだ」


もし、当たれば万事解決だがあまりにも僅かすぎる可能性に、命を預けるわけにはいかない。特に今回は俺一人だけの話では、ない。


ひくりと変な音が自分の喉から出る。


──せめて、矢を番えなければ。


暗い。手が震える。

上手く呼吸ができない。全ての人間の命が俺に絡み付いてくるようだ。


──あれ、俺は何をするんだったか。


くらくらする。

ここはどこだ。ふわふわする。

かちゃんと、物が落ちた。


──拾わなければ……何を?


空気が足りない。思考がまとまらない。今にも倒れてしまいそうだ。


奇跡が起きる。



その時。


ポツリポツリと、首筋に水があたった。

それは、文明喰らいが作り出す環境下では、到底あり得ない現象だ。そして、ほんの一瞬のこの奇跡は、俺になすべき事を思い出させるには充分だった。


──そうだった。


水の冷たさが、俺に体温を取り戻させる。

落としてしまった白の矢を拾い、大弓に番える。


──姿は……見える。


刹那の奇跡のお陰なのか、襲いくる砂と木々の境目の上空に揺らぎが見える。まるで、水面に石を投げ込んだで出来た水紋のように、陽光がはねかえる。

それは、形をなしていた。一本の巨大な紐のような。細長い体躯に、数えるのもバカらしくなるほどおびただしい量の翼。

これが環境種、文明喰らいの姿なのだ。


──弦を引き絞る。


何度も、それこそ何万回も繰り返してきた動作だ。まるで弓と一体化したように、流れに身を任せるように。


──狙いは。


ああ、分かった。

環境種は遠くはなれているはずなのに、その輪郭がくっきりと、はっきりと見える。まるで、空から俯瞰しているように。


──これなら、外す方が難しいな。


環境種は、非常にゆっくりと動く。


──ここだ。


不思議な感覚だ。矢を放つはずなのに。

必ず的中するルートが目に見えている。


──少しだけ、足りないかもしれない。


漠然とそう思ったので、自分の奥底に眠っているものを、矢に籠める。


──今だ!


環境種と俺を繋ぐ経路に、白の矢を押し込んだ。


そして。


俺が放った矢は。環境種に吸い込まれていき。



『Syo』


甲高い音。

それは、不快なものを踏みつけた時の叫びのように聞こえる。

やがて、それは身動ぎ。その進行方向を、変えた。

環境種、イメージ的にはスカイフィッシュ

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