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その九

魔獣との戦いは常に死と隣り合わせだ。なんせ、生き物が相手なのだ。不意のマモノ化による強化だったり、ターゲットを仕留めたと安心したら通りすがりの魔獣に攻撃されたりする。相手もこちらも生きるのに力を尽くしているから、仕方がないことだ。

だからといって、俺たち魔狩りが易々と死を受け入れるかと言われるとそんなことは全くない。最後まで足掻くし、安全性を高めるために武器には拘るし、準備は念入りに行う。

以前、ベテランになればなるほど仕事の支度に時間をかけると言ったが、それは長く死を恐れ慣れ親しんできたという証拠に他ならないのだ。

そして、死に近しいのは何も魔狩りだけということはない。俺たちに依頼を下す会館職員は、ひょっとすると現役の魔狩りよりも多くの死に向き合っているのかもしれない。それは、元魔狩りであり今は会館の長を務めるクリストファ・ディ・ミネルバという男には、尚更当てはまるのだろう。

だから。

そんな男が発した、


「今回ばかりは、命の保証はありません。作戦に参加するかは、皆さんの判断を尊重します」


言葉は重い。

常に、あらゆる魔狩り達をある意味で死地に送り込んできた男が、改めてそれを口にしたのだから。

だが、俺は、アイシアは、シノアは、カイは───誰一人としてその場から動こうとはしなかった。皆ギルドマスターに命を委ねると、決めていたから。

ギルマスはそれを見渡して、少し顔を伏せる。次に顔をあげたときには、不敵な目をしていた。


「私は皆さんを見くびっていたようです、申し訳ない。それでは、心おきなく働いて貰います」


「では、改めまして。本題に戻ります」


ギルマスが、地形図の西側から伸びる矢印を書いた。


「これが、環境種の進路です」

「はーい、質問いいですか?」


アイシアが、手を上げた。


「何ですか?」

「今回の環境種って、初観測のやつなの?」


環境種は、魔獣として生きていくに当たって、周辺の状態を変えてしまう方法を選択したはた迷惑なやつだ。そんな個体が観測されることは滅多にないのだが、分類される程度にはこれまでも発見されている。

そして、当然既知の環境種であればこれまでの記録があるので、対策のしようがあるかもしれない、と思ってアイシアは質問したのだろう。多分。こいつの場合、たまになにも考えてないこともあるけど。


「ああ、その件については後程詳しく説明して頂こうと思っていたのですが、まあいいでしょう。今回の環境種は、初観測です」

「因みに、環境種と呼ぶのも味気無いから、'文明喰らい'と私が名付けた」


ユリア、どや顔である。うーん、でも、


「そこまで、いい名前なのか……?」

「しっ!だめよ、ケイト」


え、だって、ぶっちゃけ環境種ってどれがきても、文明というか人の居住地なんて滅ぶし……。

あ、ユリアがいじけた。

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