その七
やべえ、進まなかった
「…………」
「……ZZZ」
「寝んな」
「…………ふごっ!」
よだれふけ。
あれから、一時間がたった。
ギルマスとユリアの二人は、「少し用事が」とかなんとかいって、どっかに行った。
地面に膝をつけて、太ももに重石を乗せられた俺たち二人を残して。
「お前、こんな状況でよく寝れるな」
「寝る以外することないじゃない」
それはそうなんだけど、そうじゃねえんだよ。
「あなたの方が先に寝たくせに」
「気のせいだろ」
「抱えさせられてる重石に顔を突っ伏して、いびきかく男なんて始めてみたわ」
え、俺いびきなんてかいてた?
「嘘よ」
「嘘かよ…………所で、アイシア」
「なに?」
「あの二人、どこでなにをしてると思う?」
そもそも、俺たちは一応作戦会議という名目でここに呼ばれたのだ。だが、肝心のその作戦参謀ともいうべき二人は帰ってこない。
「砦内デート」
「楽しいのか、それ……?」
「さあ?でも、あの二人あれでしょ。恋人ができてすぐのはっちゃけたい時期でしょ?」
「あー、そうだわ」
いや、かなり長い付き合いのはずなんだけどね、あの二人。まあね、昨晩強制着火して今日だからなぁ。
環境種襲撃の緊張感どこいった。
「人類大丈夫?」
「愛のパワーは絶大よ」
根拠ねえな。
「私たちも試す?」
「どうやるんだよ」
「武器なしで竜種の前に立つとか」
「それ、お前だけ無事なパターンだろ」
絶対やだ。
「そこはほら、不思議な力が目覚めるかも」
「余計怖いわ」
二時間たった。
「……………」
「……………………」
「そろそろおかしくね?」
「うーん、ひょっとしてマッドの薬が効きすぎたのかしら」
恐るべしマッド。
何て冗談はさておき、これは流石に異常事態と思った方が良さそうだ。
取りあえず、重石をどうにかしようと思ったその時、
『POPOPO』
「あ、鳩だ」
「ギルマスのね」
パタパタ飛び回ったそいつは、俺の頭に止まった。
「他に止まるところあるだろ!」
『Po……piiiiiiiiii……gagagagaga』
「あら」
「え、恐っ。こんな声出んの?」
通信系の魔器具みたいな。
そういえば、この鳩はギルマスの固有魔法で造られたんだっけか。
『あー、あー、聞こえますか?』
鳩が、ギルマスの声で喋りだした。正直気持ち悪い。
「あぁ、ギルマスこんな姿に……」
「ストレスのせいかしら……」
『バカなこといってないで、武器庫まで来なさい。遊んでる暇はありません』
「遊んでるって、あんたらが重石乗っけたんだろうが」
俺の反論は、聞くつもりもなかったようで鳩はバサバサと飛び立った。髪の毛何本か道連れにされた。
いつの間にか、アイシアは軽々と膝の重石を持ち上げて自由の身になっていた。俺のやつも、どけてくれない?あ、だめっすか。
「それじゃあ行きましょうか……ふべっ!」
「なにやってんだよアイシア……ごばっ!」
足が!足の感覚が!
しびれがとれてくれない!
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