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その三

今回の俺達の目的地は、サハイテではあるが、厳密にはサハイテ地方の砦の一つというのが正しい。んで、たった今知ったことなんだが、ここら一帯の管理をしているのが、クランチ家ーすなわちユリアらしい。


「「領主様ぁ!」」

「やめろ。特に、アイシア嬢」


ここまで俺を乗せてきてくれた馬の首筋を撫でてやりながら、厩舎に預ける。今は、砦の下で騎士の二人を待っている状況だ。手持ち無沙汰なので、ユリアで遊んでいるのだ。


「領主様、お茶お持ちしましょうか!」

「お疲れでしょうから、ここに腰を下ろしてください!」


ズサァ(アイシアに足払いをする音)

ドサッ(アイシアが崩れ落ちる音)

ドスン(勢いよく背中に人が乗った衝撃音)


「ふう、すまんな」

「なんで、流れるように私を椅子にするの?」


うーん、間違いなくユリアは知の貴族にしとくには惜しいと思う。王でもこんな真似できねえぞ。


「お待たせいたしました。少々、襲撃者共の引き渡しに手間取りまして………何をやってらっしゃるんですか?」

「ん、ああ。竜卿殿が疲弊している私を労って下さっているんだ」

「ああ、なるほど」

「納得すんの!?」


流石、アイシア兄。慣れっこらしい。

そんなこんなで、ようやく砦の中に入ることになった。どうなってることやら。


予想通りというべきか、俺達を出迎えてくれたギルマスは、青筋を浮かび上がらながらの笑顔で固まった。もちろん、視線の先には元婚約者らしいの領主様がいる。なおこちらはこちらで、口元をひくひくさせながらの飛びっきりな笑顔を浮かべている。

そして、かれこれ数分お互いに動かない。多分、お互い相手への文句が脳内で浮かびすぎて逆にフリーズしているんだろう。


「めんどくさいわね」

「そうだな」


うん、その通りなんだけどさ。だからといって、二人の意識を刈り取るのは違うと思うんだよ、アイシアさん。それも、既に気絶させてからそのコメントっていうのも、だめだと思うんだよ。

ほらあ、お前のお兄さん含む騎士二人も、ドン引きして……ないな。むしろ、「なんて鮮やかな」「さすが、我が妹……!」とか言って、感心してるわ。

取りあえず、崩れ落ちているギルマスを拾って肩に担いだ。


「どうする?」

「どっか空き部屋に突っ込んどきゃ良いんじゃね」


顔見知りのギルド職員いるはずなんだけど……お、丁度良いのがいた。


「おーい!マッドー!」

「誰が、マッドなんだい?」


お前だよお前。


「ちょーっと、素直になれない二人を放り込むのに良い感じの部屋用意してくれねえ?」

「ついでに、二人が素直になれるような薬も盛ってくれると最高ね」

「君たち…………まあ、いい。面白そうだから、この二人は私が何とかしようじゃないか」


なお、片方は直属の上司で、もう片方はお貴族様だ。こいつ、物怖じしなさすぎだろ。

小声で、「いい被験者が手に入ったぁ」とか呟いているけど、気にしない。


「ああ、そういえばお伝えしなければいけないことが」


珍しく、マッドが口調を改める。これは、アイシアへの伝言だろう。


「何かしら?」

「アイシ、あー、竜卿様にお荷物が届いております。それと、お客人も」


客?この最中に?

俺とアイシアは、連れだってマッドに示された場所、地下の武器庫へと向かうことになった。

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