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その十九

訳はすぐに分かる、とだけ言い残してユリアはあわただしく去っていった。


「なんで窓から出ていったんだ……?」

「さあ、本能じゃない?」


謎だ。仮にも高貴な出だろうに、そんなに木登りをしたいのだろうか。

そして、間もなくまたもや鈴の音がした。先ほど、ユリアを襲っていた連中のことを知らせたのと同じものだ。


「なんだ?」

「侵入者では、なさそうね」

「なんで、分かるんだよ」

「だって、今もまだお祖父様達は外にいるのよ?」


ああ、それはそうだ。引退したとはいえ、あのジジイの目を掻い潜るなんてそう簡単にできるはずはない。


「ん?ということは、もしかしてユリアを襲っていた奴が部屋にまで侵入できたのってわざとか?」

「今さら気づいたの?」


呆れたような目を向けられる。しょうがねえだろ、こっちはお前ら貴族みたいに日常的に人間同士で駆け引きなんてしてないんだぞ。

何のために見逃したのかを知りたいと思わなくもないが、なんとなく怖いのでやめておく。


「今度は何が来るんだ……?」

「さあ……?」


アイシアが首を傾けるので、同じ方に俺も傾けた。アイシアは反対に動かした。俺も、それを真似する。

今、真似されたくないアイシアと、暇なので真似をしたい俺の戦いの火蓋がきって落とされた。

ドアをノックする音がしたので、戦いは終わった。


「どうぞ」

「アイシアちゅわーん!お兄ちゃんですよー!元気でちたかー!」


ああ、うん。


「あら、お兄様死んでなかったの?」

「ふふふ!アイシアちゅわんは照れ屋でちゅねー!それで、いつおにいちゃまと結婚するんでちゅか?」


えーと、目をそらしたい。筋骨粒々の金髪の美丈夫が、結構年が離れた女性に赤ちゃん言葉を駆使するところなんてみたくない。

というか、もう俺にとって厄ネタでしかないという気配がビンビンにする。

その証拠に、キラキラしていたアイシア兄の瞳は、俺を認めるや否や瞳を黒く濁らせ、


「あはあはあは、この知らない虫なに?」

「そうか、虫呼ばわりか……」


いや、まあ予想はしていたけど。グノル家一同、アイシアの事好きすぎねぇ?


「うーん、ちょっと面倒ね。ケイト、こっちおいで」

「いやだ、そっちいったらすぐに斬りかかられそう」

「これの得意武器は投げナイフよ?」


あ、道理でちゃきちゃきナイフを鳴らしていらっしゃるんですね。うん、小声で「これは目、これは鼻、これは……」って呟くのめっちゃ怖いね。

どっち道、俺の命が危なそうなので、アイシアの言葉に従うことにした。


「ちょっと、屈みなさい」

「別にいいけど何されるの?」

「それはこうね」


チュッと、俺の額あたりからリップ音がした。

そして、変化はすぐに訪れた。アイシア兄が俺たちの一連のやり取りをみて、白目を向いたのだ。


「えぇ……」

「えーと、このくらいの角度から」


アイシアが、もはや彫像と化した兄の頭を拳骨でぶん殴る。因みに、アイシアの拳骨は岩をもへこませる。


「あがっ!」

「お前、兄貴殺すつもり?」

「こんくらいじゃ死なないわよ……ね、お兄様」

「はっ!す、すまなかった。また、正気を失っていた」


えーと、そのなに。古くなった魔機具かなにか?

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