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その十

流石に、孫に踏んづけられている爺さんを見るのは忍びなかったので、アイシアにはやめて差し上げるように促した。あ、俺がやめるならやめるのね。んじゃ、止めよう。ばばあ、感謝するんだな!


「なんじゃ、もう座ってくれんのか……」

「気持ち悪いぞ貴様」


おもいっきりがっかりしている爺さんは、本気で気持ち悪かった。ばばあが居なかったら、俺が口に出していた。


「なあ、アイシア」

「どうかした?」

「この爺さんが、本当に先代なのか?」

「残念ながら、正真正銘私の祖父で師匠よ」


えぇ……。

うちのばばあに踏んづけられながら、こっちに向かって何やらキメ顔してる爺が、大英雄だとは信じたくねえ。


「じゃあ、私はお祖父様と、お話、してくるから」

「お、おう」


そのお話、血を見るタイプなんじゃねえの?

アイシアは、にっこり微笑んでズルズルと先代を引きずっていった。ぼろ雑巾になりながらも、喜悦に満ちた笑みを浮かべている爺は、もはや怖かった。


「そんで、ばばあ」

「師匠と呼べ」

「師匠、なにが狙いだ」


わざわざ先代を巻き込んでまで、あんなことをしたんだ。先代竜卿の名は、決して軽くない。


「可愛い弟子が、せっかく二つ名を貰ったんだ。顔を見たいと思っても可笑しくはないだろう」

「そんな殊勝なことをする師匠だったとは、知らなかったぞ」

「そりゃそうだ。今初めて言ったからな」


真面目な顔で、師匠はそんなことを言った。


「嘘こけ」

「嘘はついてないぞ」

「だったら、言ってない理由を話せ」

「お前が悪い!」

「えー……?」


いきなりガキみたいな言い方になるの。


「まず、便りのひとつも寄越さんとは、どういう了見だ!」

「あー、それはごめんなさい」


あ、本当に俺が悪いわ。忙しさにかまけて、まったく近況報告なんかもしてなかったわ。


「元気です」

「見りゃ分かるわ。それに、せっかく祝福のメッセージを送ってやったというのに、返事のひとつもしよらんからに」

「は、祝福のメッセージ?」


身に覚えが、まじでないぞ。最近受け取った手紙といえば、アイシアからのやつと、少し違うがギルマスから渡されたやつだけだ。


「どうせお前は、アイシアちゃんの手紙に現を抜かしておったんだろうが」

「あー、ちょっと待て……もしかして、もう一枚あった明らかに俺を馬鹿にした手紙はあんたからなのか?」

「馬鹿にしたとはなんだ!しっかりと、オレの気持ちが籠もっていただろう」


籠められている気持ちが、どうみても俺をおちょくろうとしてんだよこのくそばばあ。

ん?

つーことは、アイシアの手紙と一緒に送ってきたということは、


「今回、ひょっとしてアイシアもそっち側だったのか?」


だとしたら、何やってくれてるんだ、あの女。


「いや、アイシアちゃんは関係ないぞ。今回の主犯は、あっちの変態くそ爺だ」

「先代が?」


一応大英雄なのにぼろくそに呼ばれてんな。

少し考えたいのだが、裏手から爺さんの歓声がずっと聞こえてきて、俺は集中が全くできなかった。

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