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王都編 その一

別名 ただのいちゃラブデート編

「引き受けちゃったよ……」


俺は、馬車に揺られつつギルマスから手渡された厄ネタの香りがぷんぷんとする手紙をひらひらと宙にかざす。

一応、王都に向かうことを報告したら、ギルマスに肩を掴まれて問答無用で掌のうえに、手紙をのせられたのだ。


「何があれって、これ結局誰宛なのかも教えて貰えてないんだよなぁ」


厳重に封をされていて、太陽に透かして中身を覗いてみようとしても、全く無理だ。

たかが手紙なのだが、ギルマスお得意の鳩便を使わないあたりで、余計に厄ネタ度が上昇する。正直、断りたかった。だが、


「ガチで血反吐はきながら懇願されるとな……」


ギルマスは、またもや胃を痛めたらしい。今回は、復興の予算獲得に関して何でも王族やらなんやらとやりあう羽目になっているらしく、大分ギリギリの駆け引きをしているそうだ。


「ずっと、笑顔なのがこえーよ」


口角はしっかりとつり上がっているのに、目は一切笑っておらず、口の端からは血が垂れている男の頼みを断れる度胸は俺にはなかった。


「何事もなければ良いんだけどな……」


自らフラグをたてつつ、そんなことを願った。




何もなかった。いやまじで。

特に他の客に絡まれるということもなく。マモノ化した二翼二足類の魔獣に襲われるということもなかった。


「逆に不安になってきたぞ……」


いや別にこれからトラブルになれというわけでは、全くない。

そんなこんなで、俺をのせた馬車は三日間の旅路を平和に終えた。


さて、王都についたからといって、すぐさま自由の身となれるわけではない。ここから積み荷の検査やら、身分確認やらの時間が始まる。特に魔狩りは、存在自体が兵器みたいなやつもいるので、長い時間をかけて検査されるのだが。


「あ、この馬車はオッケーよ。私が保証するわ」

「かしこまりました」


ある意味、最強の身分証がいきなり馬車に飛び乗ってきて、今は俺にもたれ掛かって、何が面白いのかクスクス微笑んでいる。


「お前さ」

「なにかしら」


彼女の長い金の糸がこそばゆい。手で払うと、不満そうに頬を膨らませた。ごめんね。


「なんで、いきなり窓から飛び込んできたんだよ……」



一瞬、またもや魔獣に襲われたかと思ったぞ。

久々というほどでもないが、大氾濫ぶりの竜卿様はいつも通りのようだった。

えーと、兵士さん舌打ちはやめて。気持ちは分かるけど。

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