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その四

後半、拙著「えいゆうのぶきはいいかんじのえだ」と内容が重複します。

ご了承ください

魔狩りも、王都の守護を主な任務とする騎士も、どちらも魔獣を相手取る職業だ。なら、これらの違いは何かというと、それぞれの戦い方に違いがある。まあ、簡単にいうと集団戦が得意か、個人戦が得意かということだ。前者は騎士団、後者は俺たち魔狩りだ。

この差がどうして生まれたかというと、俺たち魔狩りは大体が独学で闘い方を身に付けていくことにある。じゃなきゃ、こん棒振り回す女(飛行能力あり)とか、槍に股がって宙を舞う大男みたいな奴は、生まれ得ないだろう。

ところで、今回の大氾濫に関しては俺たちは紛れもなく集団戦をすることが求められている。ただ、存在そのものがスタンドプレーみたいな連中に細かい作戦など実行できるはずもなく。ギルマスに聞いてみたところ、取りあえず今回の作戦は、空の魔獣は俺のような武器種が相手取って他はなるようになれというものらしい。大丈夫かこれ。


「それで、何で弓使いのケイトが最前線にいるの?」

「こっちの方が、魔獣を早く仕留められる」


お、大型が見えた。こいつには、特製毒矢で……よし、命中。

突然足の下から魔獣が湧いてきて、飛びかかってくる。俺は右手に意識を集中して、棒を引きずり出す。その棒を、魔獣の目につき刺した。


「あー、もう君に何かいうのが馬鹿らしくなってきた」

「なら、何も言わずに見守っておいてくれ」


カイは、やれやれと首を振りつつ槍についた血を払った。


ああ、しくじった。四足獣類の魔獣が、無防備な自分に振り下ろそうとしている腕を眺めながらそんなことを思う。自分の相棒である大剣は目の前にいる魔獣に突き刺さって抜けなくなってしまった。足はしばらく前から感覚がなくなり、逃げることはかなわない。自分の身を守ってくれている皮鎧も引き裂かれてしまうだろう。

引き際を誤った。大氾濫において、冒険者に求められるのは生き残り、少しでも魔獣どもの進行を遅らせることだ。そんなことは、これまでの冒険者生活で十二分に理解していたつまりだったのに、欲をかいてしまった。

運もなかった。遠距離武器の冒険者たちからの援護がちょうど途切れたタイミングだった。

しかし、そんな自分の不運など関係なく間もなく死は訪れるだろう。


(せめて……彼女は生き残って欲しいな)


誰にも分け隔てなく優しい女性の姿を思い返しながら、激しい衝撃を予想し目を閉じる。だが、痛みはいつまで待ってもやってこない。


(なんでだ?)


何とか、目を開く。

弓を背負った顔見知りの冒険者が魔獣の腕をいなして、手にある武器で鼻っ面に一発叩き込んだところだった。急所にダメージを負った魔獣は、大きな隙を作る。顔見知りは、その隙を逃さず連打を叩き込み、ついに魔獣を退けてしまった。


「おい、おっさんしっかりしろ!受付嬢と、デートの約束しているんだろ!」

「誰が……おっさんだ……」


顔見知りになんとかそう返したところで、限界が来たらしい。何度もおっさんと呼び掛けられる声を聞きながら、意識が深い闇に落ちていく。最後に考えたのは、安堵でもなく想い人の顔でもなかった。


 なにこいつ木の枝で魔獣を追い払ってるんだよ。

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