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その四

 すぐに巣を見つけたという合図が、アイシアから出た。俺は、極力物音を立てずにアイシアの方へと向かう。飛針類は音ではなく、体温を感知して世界を識別するらしいが、あまり騒ぎ立てるのもよろしくない。相手が聞き取れるギリギリの声で、俺は問いかけた。


「エンペラーか?」

「そう、なんだけど……」


 何やら戸惑っているようだ。


「どうした?」

「見て」


 指さされる方に、視線を向ける。そこには、土でできた大きな塔があった。間違いなくエンペラー種の巣だ。それはいいのだが、かなり大きい。女王が、きわめて長命だったのかもしれない。だが、このくらいの大きさの塔は、かつて見たことがある。だから、おそらくアイシアが戸惑っていた理由はまた別だろう。すなわち、


「塔が二個見えるのは、気のせいだよな」

「私も二個見えるのよね、残念ながら」

「女王が二匹いると思うか?」

「いるでしょうね……二個ともかなりきれいな状態だし」

「あと、今ツキイログマが二頭と、モリオオクマが三頭ぶらついてる気がするんだが」

「うっそ、本当?」


 なんだろうか、予想以上に大物すぎるコロニーにぶち当たってしまったようだ。


 基本的に飛針類は、巣ごとの帰属意識は極めて高いのだが、別の巣の同族に対しては敵対することすらあり得る。だから、普通はこんな風にお隣さん同士で仲良く巣作りをするはずはないのだが。


「なんでこうなったんだよ、普通こうはならないだろうが」

「なってるから仕方ないのよね……」


 アイシアとちゃんとした手順の打ち合わせをする。エンペラー種の巣を二つ同時に相手取るのならば、人手を増やすか、あるいは巣ごと爆破してしまうのが手っ取り早いのだが。


「これだけ立派な巣なら、いっぱい針が手に入るわね」


 だめだ、この女目をキラキラさせてやがる。そしてこの女の厄介なところは、この程度の魔獣どもなら、余裕でさばき切れてしまうのだ。


「回収しきれないんじゃねえかな……というか、俺はあれだけの数の相手をしきれないぞ」

「私なら余裕よ。雑魚から針を回収するから、あなたは女王二匹と他の魔獣の相手をお願いね」


 ほぼでたとこ勝負という話になった。いやまあ、正攻法は使えないから仕方ないのだが。


「さっさと片づけて、俺を助けに来てくれんよ。あと、追加報酬プリーズ」

「まじめな話、30分程度は耐えてね。あと、追加報酬はあなたの家が完成するまでの食事ということで」

「もう一声」

「しょうがないわね。なら、今年の王都武器内覧会に付き添う権利を上げるわ」

「それ俺以外に喜ぶ奴いねえからな」


 さあ、張り切って参りましょう。あと、アイシアさん本気でさっさと助けに来てくださいよ?

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