竜の巣探索 顛末
「あなたって、やっぱり変態よね」
「お誉めに預かりどーも」
倒した竜の身体付近で合流したアイシアの第一声がこれだった。
誉められてるよな、多分。
「うん、ひらひら飛んでる紙を撃ち落とすの頭おかしい」
「身体が勝手に反応するんだよ」
「え、あれ咄嗟に狙ったの?」
「そりゃそうだろ」
「てっきり私の考えが読まれてたのかと」
「お前俺をなんだと思ってるの?」
「変態」
俺は、頭をはたいた。アイシアは、チロリと舌をだして笑っている。
「んで、最初のあの紙なんだったんだ?」
「カイの光生符よ」
視覚で世界を認識している竜だったので、閃光系の撹乱が効果を発揮すると考えたらしい。ただ、今回は馬車に閃光爆弾を積んでいたため今手元になく、光生符で代用できないかとダメもとで宙に放ったらしい。そこを、俺が反射的に射ぬいて無事に光が発生、少し竜が怯んだのでもっと強い光なら気絶させられると考えたらしい。
「よくまあ、あの中で気づいたな」
「気絶したのは、ラッキーだったけどね」
偽造するに当たって、俺の矢が身体に残っていないかを確認しながら、アイシアは答えた。
「私としては、本命の方をタイミングをしっかりはかって起爆させたあなたの方が、意味分からないんだけど」
「まぐれだ」
今回は、一応立ち止まって矢を放てたから、あの球を射ぬくことはまあできても、偶然ではない。ただ、身体を傷つけず意識だけ奪い取ることができるタイミングで破裂させられたのは、幸運以外の何ものでもない。
「二度はできねえよ、多分」
「ここまで、きれいな状態で竜の捕獲なんてしなきゃいけなくなること、もう無いから大丈夫でしょ」
「そりゃそうだ。さて、あいつらを呼びに行くか」
「ええ、そうしましょうか。……んー、伏せた方が良さそうね」
は?
疑問符を浮かべつつ、素直にしたがう。すると、しゃがんだ俺の頭上を、すさまじい速さで飛行する生き物が通りすぎた。
その生き物は、アイシアの頭上で急停止し、『PO! PO!』と鳴いた。
「鳩?」
連絡手段に使われる種類だ。この種類の鳩は、寿命は短いがその分飛行速度に優れていて、鳩便の中では最上級のものだ。
一仕事終えた鳩は、アイシアの肩に止まって羽を休めている。
「あー、俺たちが偶々ここにいて良かったな」
「そうね、あっちに居たらこの子迷子になるところだったわね。あら、ギルマスからね」
手紙に目を通すアイシアの顔が徐々に険しくなっていく。
「何だ?」
「……王都周辺に、魔獣の群れが出現、大氾濫の疑い高し」
「は?」
「それと、サハイテには、既に第一波が到達」
サハイテとは、俺たちが本拠地にしている会館のある街だ。会館の面々を、思い浮かべる。
「……ひとまずシノア達と合流しましょう」
「……ああ」
俺達は、予測をはずしていたのだ。その災厄は、既に進行をはじめていて、俺達の動きは二手三手遅かったのだった。