その十一
手始めに、探索をすることになった。まずは、竜を見つけないと話にならんからな。話し合いの結果、俺とシノアがひとまず偵察に繰り出すということになったのだ。
「で、あの二人をあそこに残してきたって言うことは、俺達で終わらせるつもりなのか?」
「あなたこういう時は、異様に察しがいいわね……ちょっとキモい」
「おい」
普通に傷つくぞ?
いくらなんでも、あそこまであからさまに場を誘導していたら、誰でも気づくとは思うんだが。
「んー、誰でもはないでしょ」
「そうか?」
「あなたほど私の事見てる男なんてそういないしね」
「やめろ」
言い方が悪い。
アイシアは、カラリと笑いながら一転真剣な表情になる。
「カイはともかくシノアは流石に危険すぎるからね」
「ああ、それは確かに」
今回の、というか壊滅前のの調査隊にあれほどの魔狩りが集められていたのは、シノアの護衛という側面もあったのだ。
「何せ、あの子は私以上の重要人物だし」
「どっちかというと、お前を守れる人間がいないだけだろ」
一人で、千体以上の魔獣を一度に討伐した魔狩りなんて、誰が護衛するんだよ。
「確かにそうね。ああ、そういえば今回の私は役立たずだと思うから、あなたが頑張ってね?」
「は?」
何言ってんだこいつ。
「だって、明らかに今回は、私の固有魔法と相性悪いでしょ」
あっけらかんとアイシアはいうが、俺には分からない。
そんな俺をしょうがないなあという風に、鼻で笑いつつ、
「ヒント、今回の目標」
「…………あー、そうだわ」
この女の固有魔法の本質は、爆発による破壊にある。本気を出せば、いくら竜種とはいえそれなりの傷を与えることはできるだろう。
だが、今回に限ってはその傷がアイシアの手によるものだとバレてはいけない。あくまでも必要なのは、きれいな状態の竜種の死骸だからだ。
無論、この女の卓越した剣技は、一流の近接職の魔狩り程度には、役立つだろうがかなりの火力の低下は否めない。
「つーことは、お前今回はただ棍棒振り回す要員かよ……」
「棍棒じゃないわよ、愛刀よ」
あ、すいません。今回は、金棒でしたね。素材は、多分金属じゃなさそうだけど。
俺達は、馬車の残骸が散らばっている地点が、ギリギリ見えるくらいの位置で立ち止まる。
矢筒から、二本無造作に抜き出して、弓につがえる。アイシアは、彼女の背中に吊るしている金棒の柄に手をやった。
「じゃあ、俺があいつを狙いやすいように、しっかり足止めしてくれよ?」
「私が倒しきる前に、終わらせてね?多分、私がやると偽造できなくなっちゃうから」
軽口を交わしてから、アイシアは地面を強くけりだした。間もなく、竜のもとに到着するだろう。
当然ながら竜はアイシアに気づいたらしく、上体を少しのけ反らせて、大きく息を吐こうとする。
だが、その瞬間を狙った俺の矢は、しっかりと奴の首を穿った。
『guooooooaaaaaa!!!』
「今回は、俺が主役らしいからよろしく」
さあ、始まりだ。