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その七

突然の事だった。俺達の馬車が、砂ぼこりに包まれたと思ったら、次の瞬間には押し潰された。俺は咄嗟に、アイシアを押し倒して盾になる。


「痛えな」


ぬるりとした液体が、視界を遮る。俺は、乱雑にそれをぬぐいながら、瓦礫を押し退ける。アイシアは、のそのそと俺の下から這い出て来るなり、地面から飛びかかってきたスナフカを切り捨てる。


「ありがとう、助かったわ」

「んー、俺の方が礼を言わないといけないんじゃねえのかこれ」


いや、何と言うか流石である。ひとまず視界が確保できる程度に、止血をしつつ御者台のいたはずの二人に声をかけた。


「カイ!シノア!生きてるか?」

「なんとか……お嬢は気絶してるけど!」


それはよかった。ひとまず、俺達は一応全員無事だ。後続の馬車の連中は、どうなっているか分からない。少なくとも、視界の範囲には影も形もない。

空から降ってくる魔獣どもを、数体手当たり次第に矢で射ぬく。個々の強さは大したことないのだが、いくらなんでも多勢に無勢だ。俺たちは、互いに背中を守りつつ、


「どうする?」

「どっかに身を隠したいわね」

「同感!」

「どこに?」


あたり一面荒野だ。洞窟どころか、草木すらない。


「穴でも掘る?」

「そりゃ名案だ。こいつらがいなけりゃ、な!」

「そうよねぇ」

「カイなんかないか?」

「取りあえず、あっちの岩陰に行ってみるのは?」

「「岩陰?」」


指差された方向には、確かに立派な岩があった。俺とアイシアは、魔獣に集中していたため気づいてなかったようだ。


「じゃあ、そう言うことで!」

「「了解」」


腰のポーチから、取り出した煙石を各々が地面に叩きつけて、駆け出した。


岩は、かなり立派なもので、俺達全員が隠れても問題なさそうな穴が空いていた。


「丁度良い感じの隙間があるな」

「そうね」


試しに、さっきこっそり回収していた魔獣の肉を、その隙間に投げ込んでみた。

すぐに、『『『kiiiiiiiiiiiiiii』』』という声と共に、バサバサバサという羽音もする。


「やったわね、窒息死の危険性は低そうよ」

「啄まれそう」

「丸裸にされそうだね……」

「それは、こうすれば何とでもなるわよ」


アイシアは、小さな石を拾って無造作に穴に放り込む。そして、弱めに爆破した。

羽音とは違う、何かがボトボト落ちる音がする。

爆発音を反響させて、魔獣たちを気絶させたらしい。


「やっぱ、その固有魔法便利だよなぁ」

「そうでもないのは、知ってるでしょ」

「それはそうだが、意外と応用範囲が広いのも事実だろ」

「それはそうね」


まあ、一番この中で便利な固有魔法を使うのは、カイなんだけど。

ひとまず、何とか安全地帯を手に入れられた俺たちは、しばしの休息をとることになった。

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