胞子症に関するもろもろと、おまけ
後ろに前話のおまけみたいな掌編があるので最後だけでもどうぞ
【胞子症とは】
モリアオタケが、飛ばす胞子によって引き起こされる諸症状の総称。個人差があるが、くしゃみ、鼻炎、目のかゆみ、脱毛などがある。対処法としては、特効薬は存在せず、なるべく胞子を吸い込まないようにすることが最も有効である。また、モリアオタケ自体を焼き払うという方策が現在は取られている。
【モリアオタケについて】
モリアオタケは、キノコである。
大きさは、傘の直径は5㎝のものから大きいもので10㎝である。
色合いは、茶色で軸は白色。
湿った場所を好み、ヌマツチモドキの背中に生えることもある。ヌマツチモドキの背中に生えることで、様々な地域に移動するのであらゆる地方でこのキノコを見ることができる。
非常に燃えやすく、火事の原因になることもしばしある。また、胞子を飛ばしてその個体数を増やす。常に体に多くの水分を持つヌマツチモドキは、モリアオタケの共生先として考えうる限り最高である。味は、非常に繊維っぽくあまりおいしくない。一部地域では、乾燥させて出汁を取ることもあるが、前述のとおり非常に燃えやすいためその乾燥のすべは、秘術である。
【ヌマツチモドキについて】
正式な分類は、水地四足科後脚跳躍類ヌマツチモドキ種である。
≪水地四足科≫
命名理由:水辺に生息すし、足が四本あるという形態的特徴から
≪後脚跳躍類≫
命名理由:二本の脚が発達し、高く跳躍することが可能なため
特徴:幼体のころは、完全に水の中で成長し、成体になると陸上での生活が主となる。群れを作るというわけではないが、一匹いるとその倍は他の個体がいるとされる。その皮膚は常に湿り気を帯びている必要があるので、乾燥を嫌う。
生息地:沼地、オアシス、海辺などの水地
飛針類や六脚跳躍類といったの人間に害を及ぼす魔獣を主食とするので、農業従事者から大人気。その為、魔狩りに討伐目的の依頼が来ることはまれ。
≪ヌマツチモドキ種について≫
生息地:沼地、光の届かない森など
特徴:擬態するために、背中を土で覆っている。その背中は、常に湿り気を帯びていて乾燥の心配がないことから、さまざまな植物が生えてくることもある。モリアオタケもその一種。この背中の植物を求めてやってきた魔獣や動物を食べてしまう。ちなみにその背中の土は、よい肥料になるのでまたもや農家さん大歓喜。その大きさは、全長は成人男性が一人寝転がったくらい。体高は、膝上からもっと高いときもある。
命名理由:擬態がみごとで、沼の底の土と見間違えることもあるため。
体色:皮膚は基本的に灰色で、場所によって多少はその体色を変えることが可能。
卵:プルプルしていて、水中の岩などに産み付けられる。プルプルで化粧品に使われることもある。また、特殊な加工を施すと娼館などにも人気の一品となる。
その他:別名は春運び。
≪退治の仕方≫
上述のとおり、害を及ぼすどころか益を与えてくれる存在なので、基本的には生け捕り。胞子症の時期のみ、人間が躍起になって焼き討ちをするが、その皮膚で火は消えるので実質お灸みたいに思われている。
≪特殊個体について≫
最近見つかった巨大なヌマツチモドキに類似した個体。変異種かと思われたが、独自に生態系を築いていることが判明したので完全な新種。名前はまだない。
皮膚にまとう粘液は、外界からのあらゆる刺激を防いでしまう。あと、夜のお店屋さんに見せたところ安定供給してくれない?という依頼が入った。新たな魔狩りの収入源ができそう。
おまけ 顛末の続き
「あの、アイシアさん?」
「おほほなにかしら」
シノアから瓶詰めを渡されたアイシアはなんか淑女みたいな言動になっている。これ、多分勘違いしてるよな。
「ナニと勘違いしてるかわからんが、これ新種の体液だぞ?それも、外界の刺激を全部通さない超優秀な」
こういえばどれほど防具やそのほかに有効な素材であるかが、伝わるはずだ。果たして、アイシアも理解したようで、顔を真っ赤にして逆ギレされた。
「な、そ、そんなことなら先に言いなさいよ!」
「俺より渡してきた張本人に言えよ……」
となりの席で、飯を食っている研究所の紫髪女と大男コンビは、われ関せずという感じで肉を切っていた。
「んー、それで、アイシア様はいったいナニだと思ったんですかぁ?」
我ながら、非常に腹が立つからかい方である。アイシアは、顔を伏せてブルブルしている。
「俺には、ただの粘液に見えたんですけどぉ」
バキリという破砕音。なんと目の前のゴリラ女は、握力だけでテーブルを粉砕した。
「しね、しね、しねぇーーーーー!!!」
「うおっちょっとまてそれをここで振り回すなシャレにならん!」
紙一重で、振り下ろされた愛剣こと針付きこん棒を回避した。そのこん棒に傷つけられた床が、爆ぜる。
「シノア、カイ、見てないで何とかしてくれ!」
「明らかに今のはケイトさんが悪いですし、恋仲同士の痴話げんかにかかわりたくないので」
「「恋仲じゃない」」
結局、アイシアをなだめるころには日はすっかり暮れていた。食堂の床の弁償、折半でどうですか。あ、俺が6でアイシアが4ですか。そうですか……。