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その七

 まず、俺は火矢の彼のおかげで浮かんだ仮説をカイに説明する。


「あいつに全く刺さらない、切れない、打撃が効かないわけなんだが、多分皮膚のせいじゃない。あいつが、身にまとっている粘液のせいだ」

「なるほど、それで火属性武器で攻撃しろって指示が来たんだね」


 話が早くて助かる。つまり、火で水分が一瞬とはいえ飛んでその隙にうまいこと矢が刺さったのだ。皮膚の色が変わったのも、まとっていた粘液が乾いて本当の皮膚の色があらわになったからだろう。そんなことよりも、


「指示出した覚えがないんだが」

「え、弓使いの彼女が、伝えに来てくれたよ?」


 カイが指さす方には、先ほどから姿が見えないなと思っていた弓使いの彼女だ。彼女は、今は矢を射って異常個体の注意を引き付けてくれている。ごめん、匍匐前進女なんて失礼な呼び方をしてて、君は今回のヒロインだ!

 ひとまず、俺の話が終わり、次はカイの番だ。


「提案なんだけど、雷を沼に使ってみていい?」

「それで、あいつを沼から引きずり出せるのか?」

「多分だけどね」


そう言うと、カイは俺から背を向けた。ついてこいと言うことだろう。そこには、深めの水溜まりと、普通の大きさのヌマツチモドキがいた。


「ちょっと、さっき実験したんだけどね」


なにやら魔器具をだしつつ、カイは続ける。

バチリと、その器具は光った。小さな雷を発生させる機能があるらしい。そして、それを水に浸けると、


「全部、気絶してるな」

「でも、この個体を見てほしい」


それは、気絶することなく水溜まりから逃げたしたヌマツチモドキ達だ。気絶している個体に比べて、少し大きいか?


「ちなみに、この魔器具はこれで最低出力なんだけど」

「そりゃすごいというか、恐ろしいな」

「もうすぐ実用化だよ。お安くしておきますよ?」

「そりゃいいな」


多分、買えるような値段ではないので、アイシアに売り付けておいてくれ。おっと、話がそれた。


「とにかく、あの異常個体に効き目があるんだな」

「多分だけどね。今の状況なら試す価値アリだと思うよ?」


ならば悩む必要はない。


「目的外魔獣討伐報告書はお前が作ってくれよ」

「それくらいで、あの異常個体の標本が手に入るなら、いくらでも書くよ」


決定だ。


作戦発表!

一、あいつの攻撃を良い感じに掻い潜る!

二、カイが沼に魔器具をつける!

三、あいつが陸に上がってきたら良い感じに殴りまくる。この時火を忘れないように

実に雑な作戦だが、どうにかするだろう。

俺は、カイの護衛役に近接武器持ち達全員を任命した。ざっくりと作戦(言えるほど立派なものではないが)を伝えると、微妙に苦笑いされた気がしなくもない。

そして、弓使いたちは、これまで通り異常個体を矢で狙い続ける。何でも、即席の火矢を作ったらしい。もちろん、店売りの属性矢には勝てないが、なにもしないよりは大分ましだ。現に、残りの二人が放ち続けた火矢は、ちゃんと効いてるようで、奴にぶっ刺さっている矢が増えている。

ということで、作戦の中心であるカイが大きく息を吸った。


「いくよ!三、二、一、今!」


沼まで、駆ける。万が一にも、カイがやられないようにしなければならない。異常個体も、その動きに気づいたようで、お馴染みの舌を振り下ろそうとする。


「やらせねえよ」


その瞬間を狙って、舌の先端に矢を放った。驚くべきことが起きる。ぼうっと、火が舌に広がったのだ。


『ge!?ge!?geeeee!?』

「ええ?」

「燃えてるっすね……なにやったんすか?」

「いや、舌に火矢を放っただけなんだけど」

「とにかく、私たちも狙ってみましょう」


今度は、一斉に矢を放つ。めっちゃ燃えた。


「おおー」

「あの粘液、燃料になるんじゃないすか?」

「なんとなく使いたくない……」


気持ちは分かる。


俺たちが、そんなアホな会話をしているうちに、カイたちはやりとげたらしい。

先程よりも、強い光が一瞬バチリと上がった。


「さて、どうなるか」


矢をすぐに放てる状態にしながら、そう呟く。正直、本当に狙いどおりに陸に上がるか分からない。最悪、異常個体がマモノ化する可能性だってある。結果は、すぐに現れた。

ずずずずずと、音を立てて沈んでいく。


「え、まじで?」


カイたちも、呆気にとられたようで、誰も強敵を倒したに関わらず、歓声をあげることはなかった。それ以上に、あの魔器具。


「やばくね?」


あれおいくら?一つ持っていれば、魔狩り廃業できるんじゃね?

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