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その六

 魔狩りというのは、言うまでもなく魔獣狩りの専門家である。ならば、何をもって専門家というのか。俺は、魔獣に対する知識や経験がずば抜けていることだと思っている。特に、魔獣の討伐に関するノウハウは、例えば猟師や王都の騎士団の連中と比べても圧倒的だ。だが、今目の前にいる巨大なヌマツチモドキに関しては、俺たちにとっても完全に未知の存在だった。


「一か所に固まるな!」


 俺は、矢を弓に番えつつ叫んだ。俺が言うまでもなく既に仲間たちは、各々が体勢を立て直しあらゆるところに散って武器を構えている。ヌマツチモドキの異常個体―めんどくさいから異常個体でいいかは、無造作に()を振り下ろしてくる。一度見たその攻撃にあたる間抜けはおらず、伸ばしきったその舌をめがけて、大剣が斧がハンマーが振り下ろされる。しかし、


「やわらか過ぎる……!」

「gegerorororororo」


どうやら手ごたえはほとんどないらしい。どんだけ弾力性に優れてるんだよ。

 しかも、悪いことに異常個体は、沼から陸に上がる気配はなくわずか三人しかいない弓使いが遠くからちまちま指すしか手がない。しかも、お肌も相当強靭なようで、ぽろぽろはじかれている。正攻法では無理そうなので、道具の力に頼りたい。


「誰か、属性矢持ってきてる奴いないか!」

「ない!」

「火ならあるっすけど」

「何でもいいや射ってみてくれ!」


 俺に頼まれた彼は、注文通りにその矢を放つ。見事異常個体の眉間に刺さったのだが。


「geoyeooeoeo」


邪魔そうに、身じろきしただけだった。そりゃそうだ、水の中で常に湿っている奴に火を放ってもすぐに消されるだけだろう。


「あー、ヌマツチモドキってこんなに厄介だったんだな……」

「あ、でも、よく見てくださいっす!」

 

 先ほどの、火矢の彼が指さす方を見た。んん?


「若干、色が変わってる?」

「はいっす。試しに、あそこを狙ってみたんすけど、ぶっ刺さりました!」


 まじか。しっかり目を凝らしてみると、本当に一本だけなのだが確実に矢が刺さっている。

 火はすぐに消えていたのに、その部分の色が変わって普通の矢が刺さるようになったこの事実が何を意味しているのか。俺の脳裏で、一つの仮説が組み立てられつつあった。


「これ、反撃の糸口にならないっすかね?」

「いける、かもしれないな……火矢はあと何本残っている?」

「これ入れて、10本っす」

「なら、もう一人の弓使いと同じ手順で矢を放ち続けてくれ」

「了解っす!って、あんたは何をするっすか?」

「ちょっと、ほぼ肉壁しか用途がなくなってるかわいそうな近接武器どもに相談してくる」


 カイあたりは異常個体のからくりに気づいてそうなので、新しく作戦を練らないと。俺は、またもや振り下ろされてきた舌を躱しながら、その舌を切りつけている大柄な研究所の魔狩りに相談するべくその場を駆け出した。


 今回の焼き討ち部隊の中でも最も身長の大きいカイはすぐに見つかった。近接武器の面々も何かに気づいたのか、属性武器を持っていた奴らが最も前に出て舌を焼き焦がしている。焼肉みたいなにおいすんな……。


「おう、カイ朗報がある」

「やあ、ケイト奇遇だね、僕は丁度君に相談したいことができたんだ」

「あいつの防御を引きはがす方法が分かった」

「こっちは、あいつを水から引っ張り出せるかもしれない可能性が出てきた」


 お互いに同時にしゃべりだしたので、相手の言ってることが何もわからなかった。あ、ごめん、俺から先に言ってもいい?

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