王都編:結末
「久しいな。 アイシア殿よ」
「ええ、お久しぶりです」
なんか偉そうでごついかんじのおじさんが来た。いやまあ、ここに参加してるだけで、少なくとも俺の首の5個くらいをはね飛ばすことは片手間でできるお偉いさんしかいないんだろうけど。
「解剖は確か、明日だったかな?」
なんか物騒な単語出てきたんですけど。
「その前に、王都吹き飛ばしますわよ?」
「それは困ったな……。 なれば、こちらの婚約者殿を………………ふむ、中々に素晴らしい筋肉だな。 よし、今から解剖に回そう。 明日はアイシア殿であいにく予定が詰まってるのでな」
「だれえ? この物騒なおっさんだれ!?」
知の貴族であり、王を排出する家系であり、ばりばりの山籠りしたいタイプのお偉いさん(宰相)だったらしい。
こっわ。
「おめでとう、竜卿殿。 はじめまして婚約者殿。 シルヴァニアン・ド・ディグディグ──まあ気軽に王様とでも呼んでくれると嬉しい」
王かあ。
ついに遭遇しちゃったかあ。
「ついでに、シノアのかなり上の方のお兄さんよ?」
「ああ……道理で…………」
研究所のあの女が王の続柄だったとかそう言うことに驚くには、俺はもう疲れはてていた。なんかこう、今更なんだが、知の貴族の上の方は、端的に言うと変態が多すぎる。口にしてしまうと、俺の命はここまでだろうが。
だってこの王も。
「床に、何かあるのですか」
「ここに使われている石は、たまに化石が埋もれていてね。 探すのが楽しい」
「あ、そっすか」
多分だけど、この今現在床に這いつくばってる王様。研究所に放り込んでもやってけるなあ。
「婚約者様……一手御指南のほどを」
「いや、拙者が先だ」
「なんのなんの。 竜卿殿を古くから知る儂こそが」
「老いぼれは引っ込んでおいてくれるかな? 僕こそがふさわしい」
「否」
「否否」
「きええええええええええええ!」
「決闘じゃあ!!!!! 止めて下さるな!!!!」
なにこれ。
「モテモテね」
「なんか内ゲバ始まったけどなんだよこれ」
「武の貴族の皆さんよ。 分かりやすくいえば、強えやつ以外には従いたくない連中。 つまり」
「あー……そういう」
でてこい俺のいい感じの枝。
「話が早くて助かるわね」
うおりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
殴り合いじゃぁぁぁぁぁぁぁ!
「モルト……マッド………………」
「アイシア様。 婚約者様がズタボロですが」
「貴族の流儀かしらね。 というか、そっちの方も…………え、なに、銅像?」
「顔色が悪いだけのダーリンです」
「ここまで顔青く……いや、緑色っぽくなることあるの!?」
◆
「という感じだったんだが」
紫髪の女は頬を膨らませながら、アイシアをぽこぽこと叩いている。そのとなりの大男といえば、同情の眼差しを俺に向けつつ、やはり無言であった。
久々の、サハイテの会館だ。
「どうして、私を呼んで下さらなかったのですか!」
「あなたまであそこに来ちゃうと、パワーバランスよくわからないことになるじゃない」
「正論はどうでも良いのです。 必要なのは私を思いやる心! こうなったら分かりました。 魔法を使って数日前に戻り」
「「「やめろ!」」」
一旦終わります。
魔獣ネタが思い付いたらまた帰ってきます。