帰ってきた王都編 顛末
体が資本である魔狩りである俺達は、当然ながら鍛えている。鍛えている、というか勝手に鍛えられているというか。
誰も足を踏み入れてない(なお、魔獣は除く)野山を駆け回ったり、でっかい魔獣の背中をよじ登ったり、重い武器を振り回したり。
そんなことをしていたら、勝手に筋肉もつくというものだ。
だが一方王都は、内部に魔獣がうろうろしていることもなく、どこも石畳で舗装された道ばかりだ。まあ、俺だってそんな人間が足を踏み入れないような土地で生活したいかと言われると、絶対に嫌だし、サハイテだって村の中は、王都程ではないけど歩きやすいように、大きすぎる石なんかは取り除かれている。
ただ、問題としては。
「体がなまる……」
なんか、だるい。
「走りに行く?」
「行く」
そういうことになった。
朝の太陽が、徐々に街並みを照らし始めている。
「ふうっ!」
アイシアが伸ばして来た手を、しゃがんで躱し、一瞬で立っている位置を入れ替わる。
危なかった。壁際に追いやられていたので、このままだと普通に捕まるところだった。
しかし、今の攻防で逃げ道が広がった。
これでしばらくは、まだ俺が逃げ続ける時間が続
「なにやってんだお前ら…………」
あっ、モルトかおっすおっす。
みりゃ分かるだろ、アイシアから逃げてるんだよ。
「なんだ会館付き、お前浮気でもしたのか?」
「そんなわけ、ねえだろ。 そうだった場合死ぬぞ、俺が」
あと、王都も滅ぶ。
「そんな大げさ…………だったら、いいなあ……」
「ご理解頂けて、何よりだ」
あいつ、びびるくらい情が深いし、これは自慢だがあいつが一番その情をぶつけてくるのは、俺なのだ。
「それを自慢って言える辺り、お前らお似合いだよな」
「そうよ、私たちはお似合いなの」
「げえ! いつの間に!」
「捕まえた」
俺の腰に手を回し、ぎゅうと俺を締め付けてくるアイシア。
普通に走るだけでは飽きてきたため始まったおいかけっこは、俺の敗北で幕を閉じた。
◆
モルトも、俺達のように走っていたらしい。考えることは、同じようだ。
「マッドは?」
「アイネスなら、寝てるよ」
まあー、アイシアさん。 アイネスですって!
「やらしいですわね、ケイトさん」
「しかも、寝てるそうですわよ、アイシアさん」
「きゃー」
「お前らも似たようなもんだろ!」
俺達の棒読みのやり取りに、モルトはちゃんと突っ込みを入れてくれつつ、
「そういえば、あのお二人がどうなったか知ってるか?」
知らない。
俺もアイシアも首を横に振る。
「流石に、進展無いってことは、無い、って思いたいんだけど……」
「いくらなんでもなあ……」
「流石になあ……」
これで進展無かったら、ドヘタレ玉無し野郎って呼ぶことにしよう。
などなどと、話題にしていたからか、ポッポーとギルマス鳩が飛んできた。
「噂をすれば」
「結婚しました報告か?」
ギルマス鳩の足にくくりつけられていた手紙を、アイシアがいそいそと開く。しかし、読み進めるにつれてだんだんとその顔が険しくなっていった。
「おい、アイシア」
「ま、まさか、進展が?」
「『昨夜はご迷惑をお掛けしました。 もろもろのご報告に、ユリアと共にグノル家を訪れていたのですが、アイシアさんの婚約者を名乗る貴族が押し寄せていましたので、ユリアがニッコニコで接待兼ぼんくらどもの弱みを握っています。 なるはやでお帰り頂くよう願っています』って……………」
ふーーーーーーー。
めんどうごとやだ!
取りあえず、ここで一旦締めます。
またすぐに連載再開させる予定です。
王都編……想定以上に長引きそうだ…………。




