その十三
ピシピシと音を立てて、机に霜がついていく。ユリアも冷静になったのでこれ以上凍ることはないのだが普通に寒いので、温かい飲み物を注文した。
「さて、同類達どう思った?」
「呼び方!」
ギルマスとは当然性別が同じだから、そういうくくりで同類って言われたらそうかもしれないけども。
「実際のところはどうかわからねえですが」
「喧嘩の原因のあれそれは、多分誤解だな」
いやまあ、原因がなんであれ痴話喧嘩で会館を壊滅させたっていう事実はなくならないが。
「そう考えた理由は?」
「まず、一つ。 さっきも言ったが、おもちゃを無防備に、他の会館職員も入ってくる可能性が高い部屋の、ましてや机に置くわけがない」
やましいことしてる自覚があるからな、おもちゃの場合は。
「説得力あるけれど、結局おもちゃの話なのよね」
「お前が説明させてるんだろうが」
店員さんが、飲み物を持ってきてくれたので、一次中断。この店員さん、顔見たことある気がするなあ……、グノル家本邸で。まあそうか、店員さんもそら配下達だわな。
「んで、二つ目なんだけど。 マッド、ギルマスの日頃の過ごし方をどうぞ」
「なぜ、私にふるんだい」
会館職員の方が、実態把握してるだろうし。
「朝から晩まで、書類パーティーしてるね、最近は特に」
「どこぞのギルマスの元婚約者女貴族が、ふらふらサハイテに来るようになってからね」
ユリアは顔をそらす。
「つまり、くっそ忙しい今、少なくともあの部屋でおもちゃを使う暇はないな」
何か言いたげなモルトは、黙らせておく。いらんこと言っても、俺らの立場が悪くなるだけだぞ、とくにこの女どもの方が物理的に強いこの状況だと。
「で、これは付加情報になるんだが。 アイシア、ギルマスって魔獣由来の製品とかのチェックとかも仕事の一貫だよな」
「そうね」
「……………すまない、今更なのだが、あいつ働きすぎなのではないか?」
せやねん。
製品チェックは絶対ギルマスがやる必要ないと思う。
「最近、新しい素材を、美容関連のギルドがゲットしたらしいんだよな」
なんでも、保湿に優れたやつらしい。そして、それを採取したのは俺だ。
「何を隠そう、その素材ってのはでっけえヌマツチモドキっぽいやつの、皮膚のぬるぬるなんだが、そろそろ商品化してもおかしくねえよな時期的に」
ということで。
「どう思う?」
ユリアは、顔を伏せてそのまま氷の中に閉じ籠った。
「…………ユリアって、今年でいくつだったかしら?」
「アイシア様、年齢を聞くのは同性同士であってもマナー違反ですよ。 イイオトナのこういう反応、めんどくさいですね……」
「マッドの方が、マナー違反ってもんじゃないレベルで失礼ね」
ギルマス関連だと、この女とことん幼くなるんだな。めんどくさ(本音)。