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その四

 先ほどから、ちょくちょく名前が出ているが、今回の焼き討ち任務が魔狩りの仕事になる理由は、ヌマツチモドキという魔獣にある。このヌマツチモドキという魔獣は、言うならば蛙だ。その皮膚は泥でおおわれていて、この泥で、皮膚の乾燥を防いだり地面に擬態して獲物を捕獲するのだ。大きさは、最低でも俺の膝上くらいの高さでもっと大きくなれば、俺たちを乗せてきた馬車を引いていた馬より少し大きいくらいだ。

 で、このでっかい蛙モドキがどうして胞子症にかかわるのかというと、答えはその背中にある。モリアオタケは、この背中によく生えるのだ。なんでも、適度に湿り気を帯びていて、さらにある程度移動してくれるので、繁殖に都合がいいらしい。そして、ヌマツチモドキのほうも、このモリアオタケを狙ってきた動物やら魔獣を捕食できるので、win-winらしい。

 ならば、このヌマツチモドキを討伐すれば任務達成かというと、そんなことはない。このヌマツチモドキは、益魔獣だからだ。こいつは、飛針種や跳脚種を主食としているので、まあ農家のおっちゃんたちに好かれる。しかも、なんでも皮膚を覆っている土は、いい肥料になるらしく『肥え運び』という別名も持っている。ならばどうすればいいかというと、背中のモリアオタケだけを燃やすのだ。モリアオタケ、とくにその胞子は燃えやすく、ヤマツチモドキの土は湿っているので本体まで火が移ることはない。それゆえ、今回の依頼は焼き討ちといわれているのだ。焼き払いじゃないのは、ギルドマスターの私怨だろうと俺は踏んでいる。


 沼にと無事に到着した俺たちは、二班に分けた。ヌマツチモドキ追い込み班と、網を構えている班だ。ヌマツチモドキが、沼の中に逃げ込まないように馬車の中で、役割を決めておいたのだ。


「なんで、俺が追い込みなんだよ」

「しょうがないじゃないか、そもそもケイトが軽装備の魔狩りは、強制的に追い込み班に配置するようにしたんだろう?」

「そうなんだが、だっるい……お前は、網を構えるだけだし」


 言ってなかったが、俺はこの焼き討ち依頼の皆勤賞だ。この依頼は、基本的に実力というより胞子症か否かで、選ばれる。したがって、新人時代から毎年この依頼を引き受けているのだ。


「しかも、今回はリーダーの君が配置を決めたわけだし」

「リーダーなんて、別の奴に任せればよかった……」


 俺以外にもこの依頼の常連はいるが、一応魔狩りのざっくりとした実力の序列では、俺かカイが一番上になる。そして、カイよりも俺の方が、この依頼の経験が多ければ必然的にそうなってしまったのだ。


「ほれ、リーダー号令」

「あー、ささっと怪我無く終わらせよう」

「「「うーす」」」


 実に緩い団結の元、第10次焼き討ち部隊のお仕事が始まった。あ、おい沼の中に逃げるな。

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