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その五

ガタゴト揺れる馬車の上。


「狭いからもうちょいつめなさいよ」

「俺、かなり限界まで端にいるの見えてねえのかよ」

「チッ」


舌打ちした、アイシアはしぶしぶ俺の膝の上に座り、頭を胸にもたれ掛からせてきた。バランスが悪そうだったので、俺の両手で腰辺りを固定。


「暑い」

「だろうな。 俺が御者の方に行くか」

「だーめ」


緩く巻き付けていた腕をアイシアは掴んで、もっと強く身体を抱き締められるように動かされる。


「…………私は一体何を見せられているのかねえ」


椅子の取り合いだろ、文字通り。


逃げ出したユリアを捕獲、というよりかはギルマスにとっとと捕まえに行かせて、さっさとケリをつけさせよう御一行、のメンバーを紹介するぜ!


その一。


「調停役って、王都まで追っかけるのも、役割の範疇なのか?」

「余裕で範疇外よ」


調停役、アイシア。


その二。


「そんで、マッドは何のために乗ってんの?」

「今更だが、まあいい。 何を隠そう私も、調停役でねえ。 だるい、帰りたい」


なんでまた、貴族同士の喧嘩の調停役にマッドが。


「なんでって……私も一応貴族だよ?」

「え」

「なんで知らないのよ」


だって……研究所はともかく、会館は基本的に引退した魔狩りか、よそのギルド所属の商会の次男とか三男とか、次女とかそういう連中の溜まり場じゃん。


「それはそうだけど」

「名前で一発で分かるだろうに」

「名前…………マッド家…………?」


こいつマジかよ、とマッドは乾いた笑い声をあげて、アイシアは首を横に振りながら溜め息を吐いた。

俺が悪かった。


気を取り直して。

その三。


「そんで、モルトは強制参加、と」

「私はか弱いからねえ。 ダーリンが居てくれると、かなり心強い」

「護衛、ってことかしら」

「ええ。 アイシア様がいらっしゃるので、必要ないといえば必要ないかもしれませんが」

「んー、王都ではそっちとは別行動になることが多くなっちゃうと思うから、彼を連れてきて正解よ」


へー、別行動になるのか。竜卿絡みだろうか。


「なに、あなたは他人事みたいな顔してるのよ。 当然だけど、私と一緒に行動してもらうことになるからね」

「そうなのか」

「そうよ。 多分、ギルマス達の痴話喧嘩と同時並行で、御披露目会をしなきゃいけなくなるからね。 ……せっかくずっと逃げてたのに……こんな形で王都に………………行くはめになるなんて…………」


未来を想定してか、既にうんざりしているアイシア。


「御披露目会?」

「ええ。 ざっくりいうと、あなたと私の婚約発表よ」


婚約。婚約してたっけ……?


その四。


「ケーイト君♬♪」

「あー! ごめんなさいごめんなさい、婚約が嫌という訳ではまったくなく、むしろ超バッチ来いなんだけど! みみだけは、耳は! ふーって、やんの止めてくれ!」


弱いからマジで!咥えないで!弱いところ熟知されてるからほんとにやめて!


「…………私は一体全体どうしてこんな罰ゲームを受けているのだろうねえ………………」


竜卿の婚約者、俺。


そして、その五。


「それでこの袋なんだが」

「いつ目が覚めるの?」

「アイシア様達の切り替えの早さに、置いていかれそうですが、まあ、多分、王都に逃げた拗らせお姫様のキスでなんとかなるでしょう」


袋の中身さんは、日頃の疲労の蓄積が尋常じゃ無さすぎたらしい。本当に大丈夫なんだよな?薬の副作用で二度と目覚めないとか、そういうあれじゃねえよな?

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