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その四

つーことで、元凶二人が意識を取り戻すのを待つついでに、一晩あけた。

普段なら、朝飯を食いに会館へと向かうのだが、氷漬けになってしまったので、諦めて飯は自分の家で食べて来た。因みに、会館は復旧のついでに大掃除をするらしい。割れた氷が、良い感じにホコリとかの汚れをこそげとってくれるそうだ。たくましいな。

それにしても、実に事情聴取日和だ。


「どんな天気よそれ」

「今みたいな天気」


空を見上げれば、灰色の雲が全てを覆い隠している。めっちゃ曇りだ。


「なにも分からないまま、終わりそうね」

「不穏なことを、言うな」


流石に頭は冷えていると信じたいが、元凶二人から事情を聴く間にまたもや暴れだされたらたまったもんじゃない。そのため、もしもの時に喧嘩を止められる要員として俺が呼び出されたのだ。


「それにしてもさあ」

「なによ」

「単に痴話喧嘩の事情を聴くだけなのに、ちゃんと貴族を連れてかないとだめなんだな」


そう。

アイシアは今回、事情聴取要員である。俺みたいに、用心棒ではないのだ。まあ、用心棒の誰よりも余裕で強いのが、アイシアなんだが。


「あー、まあね。 一応、形式的にはユリアもギルマスも、知と武の方ではそれぞれ名門出身だし。 いらない火種は作りたくないでしょ?」


確かに。

あの二人が、火種をわざわざ拡散するとは思えないから、どっちかというと他の貴族対策なのだろう。


「サハイテは、ある意味でその辺の闘争でも、最前線だから、ある意味しょうがないのよ」

「そうなのか」

「ええ。 原因は、主にユリアだけど」


なにやってるんだあの女。


「貴族にとっての結婚は、すなわち家との結びつき、って言うのが大半だからね。 武の方はともかく、知でバリバリやってる家柄は特に、ね」


知で、バリバリやってる家柄ってのは要するに、国の中心のお偉方だ。

バリバリやってない家柄ってのは、研究所に居座ってる面々。こっちは、ほっとくと山籠りとか始めかねないから、逆に要注意らしい。


「で、そのバリバリ筆頭の当主(独身)が、元婚約者で武の貴族のこちらは三男坊の方に入り浸っている、ってのが現状よ。 なんかあると思うでしょ、普通は」

「そうだな」


裏でなんか、色々手をまわしてたりとか、疑うわなそりゃ。


「実際は、餓鬼のケンカな訳だけど」

「あー、どうせなら監視してる貴族の面々が、片付けてくれりゃあ良いのに……」


世の中、ままならないね。やっぱり、魔獣ぶっ倒すだけのお仕事って、素晴らしいね。



そんなこんな、愚痴をこぼしつつ、会館の裏手へと到着。

会館とどっこいの大きさのお屋敷が、ギルマスの家なのだ。


「家、つってもなあ」

「帰ってるところ、見たことある?」

「初めてだな」


ほぼ、空き家なのだ。あの男は、会館に住んでいるので。

えーと、こういうでかい家は、扉のところについてる、このスイッチを押せば良いんだっけか。


「ここを、押すには儀式があってね。 三回回って、ワンッて吠えた後に、今にも力尽きそうな竜種の声真似をするっていう」

「ほれ、アイシア。 早くしてくれ、待ってるから三回回れ」


平然と嘘をぶちこむな。不満そうに、頬を膨らませている女の顎をひっつかみ、ぐりぐりしていたら。


「良いところに! アイシア様、ケイト君! ユリア様が脱走なされたから、すぐにこれを担いで追いかけてくれたまえ!」


はあ?

あと、その袋、人間大なのなんで? それ持ってくの怖いから嫌すぎるんだけど。

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