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その二

会館は、基本的にはでかくてボロい。魔獣が襲撃してきた時に、囮にするためにあえてでかくして、壊されても悲しくないようにボロくしてあるそうだ。

まあ、実際のところは単にもろもろの修繕にまで資源を回せないってのが現実な気もするが。

そんな会館が、たった一夜で、


「わあ……」

「すげえな」


氷の城に。

あのぼろかった建物がそれはもう、カッチコッチに凍っていた。

何でこうなったかを、問うまでもないだろう。


『あほ!』

『ばか!』

『う○ち!』

『し…………ばーかばーか!』


なんなら、マジで聞くに耐えない罵声まで、会館の中にすらいない俺たちの耳に届いているし。


「俺達、ガキの喧嘩を止めに来たんだっけ……?」

「遊び心を忘れないのがオトナなんでしょ」

「遊び心って、決してそういうやつじゃねえよ……」


少なくともギルマス達のこれは、怒りのあまり遊び心とか持てる余地もないんじゃねえかな。つーか、遊び心あったらもうちょい罵倒の種類増えてるだろ。


「とにかく、行くわよ」

「おっす」

「あ、あの! 職員と魔狩り数人が、氷で足止めをされていまして、それも助けて頂けませんか!」


りょーかいりょーかい。

…………痴話喧嘩に周りを巻き込むなよあのアホ二人、取りあえず拳骨くらい落としても許されるな。


会館の内部は物凄くひんやりしていた。


「やあ、ケイト君」

「マッドか。 無事か?」

「無事だと思うかい?」


顔が青白い。そりゃそうだ、こんな寒いところにいたらそうなるわ。


「すぐに氷割るわね」


アイシアが、砂をポイっとなげてちょっと爆破。しっかり刻印がついてるわけではないから威力は大したことないんだが、人を傷つけず氷を割るには充分だ。


「助かりました……」

「歩ける?」


あー、そうか。凍傷なんかもあり得るからな。

…………ちょっと、冗談なしにユリアには一発いれないとダメだなこれ。


「はい。 職員は、特注の靴を履いていますので。 それで、あの」

「どうした?」

「ダー…………モルト以下数名の魔狩りが、二階でおそらく確実に氷漬けになっているので、そちらもどうにかしてほしい」

「もちろん」


ついでに、良い薬持ってない?


「薬?」


何に使うんだそんなもん、とアイシアが怪訝な目を向けてくる。


「あのバカ二人を取りあえず昏倒させれそうな強力なやつ」


多分、それが平和的にあの二人を止められると思うんだ。話し合いで制止できるのが一番ではあるんだが。


「それなら、カウンター裏の私の机に、飛びっきりにハイになれるやつがあるね。 二人を止められることは間違いない」

「良いじゃねえか」


きゅっと口角を吊り上げる、マッドと俺。


「……なんか、私達の方が悪いことしてるみたいね…………」


安心しろ、間違いなく正義は俺達にある。



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